ストーカー行為等の規制等に関する法律

【ストーカー行為等の規制等に関する法律】
(罰則)
第18条
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第19条
1項
禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項
前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第20条
前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※法改正で罰則が加重されました。

1. ストーカー行為等の規制に関する法律(ストーカー規制法)

(1) ストーカー規制法の概要

ストーカー規制法では、同一の者に対し、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で「つきまとい等」を「反復」してすることを「ストーカー行為」と定義しています。

そして、ストーカー行為をした者は、ストーカー行為罪として、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

一方で、「つきまとい等」があっても「反復」性がなく、ストーカー行為にまで至らない段階の行為は、「警告」・「禁止命令」等の行政措置の対象となっています。加害者の行為が「つきまとい等」に該当し、被害者が不安を感じており、当該行為の態様や頻度、きっかけ等を考慮して反復して当該行為をするおそれがあると判断されれば、「警告」がなされます。警告を受けた行為者が、警告に従わず、さらに繰り返して同じ行為をするおそれがあると認められる場合は、行為者に対して「禁止命令」が発せられます。加害者が、禁止命令に反して再度ストーカー行為等を行うと、加害者は1年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられます。

上記のように、ストーカー規制法は、ストーカー行為の中から悪質性の高いものをストーカー行為ととらえて罰則の対象とするとともに、そこまでに至らない前段階の行為を「つきまとい等」として、警告、禁止命令等の対象としています。

(2) 「つきまとい等」

特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、または、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的でなされる下記行為は、ストーカー規制法上「つきまとい等」とされます。

なお,下記行為の被害対象者としては,「特定の者」以外にも,その配偶者,直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者が規定されています。

  1. つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居・勤務先・学校その他その通常所在する場所の付近において見張りをし,住居等に押しかけ,又は住居等の付近をみだりにうろつくこと
  2. 行動を監視していると思わせる事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと
  3. 面会や交際その他義務のない行為を行うことを要求すること
  4. 著しく粗野、乱暴な言動をすること
  5. 電話をかけて何も告げず,又は拒まれたにもかかわらず,連続して電話をかけたり,ファックスを送信したり,メールを送信したりすること(法改正により、SNSを用いたメッセージ送信等を行うこと、ブログ、SNS等の個人ページにコメント等を送ることも対象となりました。)
  6. 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知りうる状態に置くこと
  7. その名誉を害する事項を告げ、又はその知りうる状態におくこと
  8. その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと(法改正により、電磁的記録やその記録媒体を送り付ける行為等(例 インターネット掲示板への掲載)も明確に対象となりました。)

→前述のように、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で上記行為を反復する行為(①~④の行為については、身体の安全、住居の平穏もしくは名誉が害され、または、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法による場合に限る)はストーカー行為罪となります。

もっとも、ストーカー行為として処罰される行為は、「社会的に逸脱した」つきまとい行為等のうち「相手方に対する法益侵害が重大」である場合に限ると解されています。

最判平成15年12月11日では、「ストーカー規制法は、上記目的を達成するため、恋愛感情その他好意の感情等を表明するなどの行為のうち、相手方の身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる社会的に逸脱したつきまとい等の行為を規制の対象とした上で、その中でも相手方に対する法益侵害が重大で、刑罰による抑制が必要な場合に限って、相手方の処罰意思に基づき刑罰を科すこととしたもの」と判示しています。

2. 被害者の対応策

(1) 警告の申出→禁止命令→禁止命令違反による逮捕

被害者の方は被害者の住所地を管轄する警視総監もしくは警察本部長または警察署長に対して「警告申出書」を提出します。

加害者の好意がつきまとい等に該当し、被害者が不安を感じており、当該行為の態様や頻度、きかっけ等を考慮して反復して当該行為をするおそれがあると判断されれば、警告がなされます。

また、警告を受けた行為者が、警告に従わず、さらに繰り返して同じ行為をするおそれがあると認められる場合は、行為者に対して「禁止命令」が発せられます。

加害者が、禁止命令に反して再度ストーカー行為等を行うと、加害者は1年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられます。

なお、法改正により、加害者の行為がストーカー規制法2条に該当し、被害者が不安を感じており、当該行為の態様や頻度、きっかけ等を考慮して反復して当該行為をするおそれがあると認めるときであって、当該行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、「警告を経なくても禁止命令等」をすることができるようになりました。

(2) 警察本部長等の援助

ストーカー行為等の被害を防止するため、警察本部長等に対し、自衛措置に必要な下記のような援助の申出をすることができます。

  1. 被害防止交渉を円滑におこなうために必要な事項の連絡
  2. 行為者の氏名および住所その他の連絡先の教示
  3. 被害防止交渉を行う際の心構え、交渉方法等の助言
  4. 被害防止交渉を行う場所としての警察施設の提供
  5. 防犯ブザー等防犯機器の教示または貸出
  6. 警告、禁止命令等を実施したことを明らかにする書面の交付
  7. その他被害を自ら防止するために適当な援助

※もっとも、①~④に関しては、例えば警察が警察署内に加害者と被害者を読んで話し合いで解決することを想定しており、ストーカー行為に対する対応としては妥当ではないと批判が多いところです。実際、被害者の方が加害者と直接接触することは嫌悪感があると思いますし、危険も予想されるところです。

3. ストーカーに伴って、生じうる犯罪

例えば、下記行為があれば、ストーカー規制法以外でも処罰されます。

  1. 「かつての交際相手からのメールや電話を無視していたところ、殺すという内容のメールが送信されてきた」
    →脅迫罪                 詳しくは ~ 脅迫罪・強要罪 ~へ
  2. 「玄関のポストが壊されていた。また、ドアノブや鍵穴が壊されていた」
    →器物損壊罪                 詳しくは ~ 器物損壊罪 ~へ
  3. 「郵便ポストから郵便物を盗まれた」
    →窃盗罪                     詳しくは ~ 窃盗罪 ~へ
  4. 「家に入られて下着を盗まれた」
    →住居侵入罪、窃盗罪     詳しくは ~ 住居侵入罪 ~ ~ 窃盗罪 ~へ
  5. 「付き合っていたころに撮った裸の写真がSNSに流された」
    →リベンジポルノ被害防止法違反  詳しくは ~ リベンジポルノ被害防止法~へ
  6. 「加害者に追われて逃げようとしたら、いかせないように腕を強く引っ張られた」
    →暴行罪                 詳しくは ~ 暴行罪・傷害罪 ~へ

~ストーカー規制法違反事件の弁護活動~

1.示談活動

ストーカー規制法で規制されている行為は,親告罪ではありません。

親告罪とは,被害者の告訴がなければ,裁判にかけられることがない犯罪のことです。

親告罪でないとはいえ,被害者に真摯に謝罪をし,示談が成立すれば、不起訴処分を獲得することも期待できるでしょう。

一方、刑事裁判になってしまった場合でも、ストーカー規制法違反事件の被害者との間で示談や被害弁償を行うことで、執行猶予付判決を獲得できる可能性が高まります。

また,弁護士を通すことにより,被害者とコンタクトをとれる可能性が上がります。

また、直接、被疑者が被害者と交渉を行うと被害者の気持ちを逆なでして示談交渉が決裂したり、不相当に過大な金額での示談解決になる可能性があります。

弁護士が間に入れば、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決を目指すこともできます。

2.早期の身柄開放を目指します。

逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。

そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

3.否認事件

身に覚えがないにも関わらずストーカー規制法違反の容疑を掛けられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して、不起訴処分又は無罪判決になるよう主張する必要があります。ストーカー規制法違反を立証する十分な証拠がないことを指摘することも重要になります。

ストーカー規制法違反の容疑で警察等の捜査機関に取り調べ又は逮捕された方、ストーカー規制法違反の罪で刑事裁判を受けることになってしまった方は、ストーカー規制法違反事件の実績豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部までご相談ください。

さいたま市を中心に埼玉県及び関東地方一円の刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士が,ストーカー規制法違反事件における刑事処分の見通しと取り調べ対応、前科回避や減刑に向けた対応方法等をアドバイスいたします。

ストーカー規制法違反事件の当事者が逮捕・勾留等による身体拘束を受けている身柄事件の場合、最短即日に、弁護士が留置場や拘置所等の留置施設まで本人に直接面会しに行く「初回接見サービス」もご提供しています。

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