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【報道解説】高校生が児童ポルノ禁止法違反で逮捕

2022-05-29

【報道解説】高校生が児童ポルノ禁止法違反で逮捕

男子高校生が女子高校生みだらな行為の様子をスマートフォンで撮影したことを理由に、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「兵庫県警明石署は20日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反製造)の疑いで、神戸市西区の男子高校生(16)を逮捕した。
逮捕容疑は2月中旬ごろ、交際していた県内の女子高校生(16)に対し、18歳未満と知りながらわいせつな行為をし、その様子をスマートフォンで撮影した疑い。調べに対し、容疑を認めているという。
女子高校生の保護者が5月12日に同署に相談し、容疑が発覚した。」
(令和4年5月20日に配信された神戸新聞NEXTより引用)

【児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)とは】

報道では、交際相手の16歳の女子高校生とのわいせつな行為をしている様子をスマートフォンで撮影したとありますが、児童買春・児童ポルノ禁止法(以下「児童ポルノ禁止法」とします。)「児童ポルノ」を「製造」する行為に対して罰則を設けています。

本件では、どのような動画が「児童ポルノ」に当たるのでしょうか。
わいせつな行為が具体的にどのような行為であるかについては報道からではわかりませんが、16歳同士の男子高校生と女子高校生との性的行為を撮影したのであれば、以下の2つのうちのいずれかの児童ポルノに当たることになるでしょう。
仮に、女子高校生を相手方とする性交又は性交類似行為の様子を撮影したのであれば児童ポルノ禁止法第2条3項1号が定める児童ポルノに当たることになります。
また、1号が定める児童ポルノに当たらなくても、女子高校生の性器等を触る様子か、又は女子高校生が他人の性器等を触る様子であって、性欲を興奮させ又は刺激させるものであれば、児童ポルノ禁止法第2条3項2号が定める児童ポルノに当たることになります。

次に、「製造」についてですが、児童ポルノ禁止法では、児童ポルノ製造を、
①提供目的での製造(児童ポルノ禁止法7条3項)
②単純な製造(同法7条4項)
盗撮による製造(同法7条5項)
④不特定多数の者への提供又は公然陳列の目的での製造(同法7条7項)
の4つに分けて規定しています。
①②③については、法定刑が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられることになり、④については、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられることになります。
報道では、男子高校生がどのような目的で児童ポルノ製造したかについては明らかになっていませんが、例えば、後で自分で見返す目的で製造したということであれば、②の単純な製造に当たることになるでしょう。

【同い年の交際相手であっても児童ポルノ禁止法違反になるのか】

報道では、逮捕された16歳の男子高校生と、被害にあった16歳の女子高校生は交際関係にあったとありますが、この事情は児童ポルノ禁止法違反の成立に何か影響があるのでしょうか。

18歳未満の青少年が同じく青少年に対して行った性行為については、罰則が科されない場合があります。
例えば、事件があった兵庫県が定める兵庫県青少年愛護条例第21条1項では、青少年に対してみだらな性行為やわいせつな行為を行うことが禁止されています。
これに違反すると、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることが原則となります(同条例第30条1項2号)が、例外として、この罰則規定は青少年には適用されないことになっています(同条例第32条)。
そのため、16歳の男子高校生が16歳の女子高校生に対して行った性行為については、兵庫県青少年愛護条例の適用の対象外になりますので刑罰が科されることはありません。

ただし、児童ポルノ禁止法では、兵庫県愛護条例第32条のような青少年に対して刑罰を問わないとする免責規定はありません。
従って、16歳の男子高校生が交際相手の16歳の女子高校生とのわいせつな行為を撮影した場合には、児童ポルノ禁止法違反に問われることになります。

【高校生のお子さんが逮捕されてお困りの方は】

未成年である16歳の高校生の方が逮捕された場合、成人の場合と同様に最長20日間の勾留、又は最長10日間の勾留に代わる観護措置として、引き続き身柄を拘束する処分が続く場合が多いです。
身柄拘束が長引くと、学校生活や社会生活に与える影響が大きいです。
そのような長期の身柄拘束を回避するためには、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらいましょう。
この初回接見によって、突然逮捕されて不安に思っているお子さんの不安を和らげる効果が期待できますし、また、事件の見通しや今後の流れについて弁護士から説明を受けることもできるでしょう。
そして、この初回接見をきっかけにして弁護士が事件に早期に介入することが出来れば、長期の身柄拘束を回避するための弁護活動を取ることができますので、早期の身柄解放の可能性を上げることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件において、逮捕直後に早期に事件に介入できたことにより、勾留又は勾留に代わる観護措置を回避した経験を持つ弁護士が在籍しております。
児童ポルノ法違反の疑いで、ご家族の中で逮捕された方がいてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談下さい。

【報道解説】わいせつ電磁的記録記録媒体陳列で逮捕

2022-05-26

【報道解説】わいせつ電磁的記録記録媒体陳列で逮捕

動画販売サイトでわいせつ動画を公開したことにより、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

動画投稿サイト『FC2コンテンツマーケット』にわいせつ動画を公開したとして、警視庁は19日、無職の男性(43)をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕したと発表した。
2020年10月以降、自分で撮影したわいせつ動画113本をFC2で販売し、約2億9400万円を売り上げたとみて調べている。
発表によると、男性は昨年12月~今年4月、SNSなどで募集した女性と一緒に撮影したわいせつ動画2本をFC2に公開し、不特定多数が閲覧できる状態にした疑い。
逮捕は17日。『生活費を稼ぐためだった』と供述している。」
(5月19日読売新聞オンラインより一部引用)

【わいせつ電磁的記録記録媒体陳列とは】

刑法175条1項では、善良な性秩序を維持するために、わいせつな画像や動画を公然陳列した者に、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処すか、又は懲役及び罰金を併科するとしています。
ここでいう公然陳列とは、わいせつな画像や動画の内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいいます。
無修正の性交渉動画動画販売サイトにアップロードする行為は、わいせつな動画を不特定又は多数の人が認識できる状態に置く行為といえるでしょうから、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪が成立することになるでしょう。

【逮捕されたらスピードが勝負】

警察に逮捕された場合、多くの場合は以下のような流れで手続きが進むことになります。

警察が逮捕した人(被疑者)を取り調べた結果、被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると判断した場合、警察は逮捕してから48時間以内に事件を検察に送致しなければなりません。
もっとも、実際には、警察が48時間経過するぎりぎりまで取り調べてから事件を検察に送致するということはなく、遅くとも逮捕された日の翌々日のお昼ごろまでには事件を検察に送致する場合が多いです。

事件の送致を受けた検察官は、被疑者を取調べた上で、検察官が被害者の身柄を更に拘束する必要があると判断した場合は、裁判官に対して勾留の請求をします。
この勾留の請求は、検察官が事件の送致された被疑者を受け取ってから、24時間以内、被疑者が逮捕されてから72時間以内に行う必要があります。
勾留の請求を受けた裁判官が事件の記録を読み、被疑者から事件についての話を聴いたうえで、勾留を認める判断がなされると勾留が正式に決定されることになります。

勾留が決定してしまうと、原則10日間、勾留期間が延長されると更に10日間、合計すると最大20日間にわたって身柄を拘束される場合がありますので、勾留の開始決定はその人の社会生活に重大な影響を及ぼすことになります。
そのような勾留による影響を避けたい場合、勾留を回避する弁護活動が非常に重要になりますので、ご家族の誰かが逮捕されたという連絡を受けた場合、いちはやく弁護士に初回接見を依頼して、弁護士逮捕されたご家族の元へと派遣されることをお勧めします。
この初回接見によって、事件の見通しや今後の事件の流れなどについて弁護士から説明を受けることができるでしょう。
そして、この初回接見をきっかけにして弁護士逮捕直後に事件に介入することができれば、事件の送致を受けた検察官や勾留請求を受けた裁判官に、勾留を行う必要がないことを主張するといった、勾留決定を回避するための弁護活動をとることが可能となります。
弁護士のこのような弁護活動によって、勾留の開始決定を回避する可能性を上げることが期待できるでしょう。

俗に言う、「逮捕直後はスピードが勝負」というのは、逮捕後、勾留の開始決定がなされるまでには時間の制約があることからスピーディーに手続が進んでしまうため、勾留を阻止するための弁護活動をとるためには、いち早く弁護士が事件に介入する必要があるということを意味しています。

もちろん、勾留開始が決定した後でも、勾留の開始について準抗告などの不服を申立てる手段がありますので、勾留が決定したからといって、諦めずに弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、勾留の開始決定を阻止した経験のある弁護士や、勾留の延長を阻止した経験がある弁護士が在籍しております。
ご家族の中で、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕された方がいてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで、ご相談下さい。

【報道解説】公然わいせつ罪(幇助含む)で逮捕

2022-05-23

【報道解説】公然わいせつ罪(幇助含む)で逮捕

公然わいせつ罪および公然わいせつ罪幇助の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「客の男女に公然わいせつな行為をする場所を提供したとして、警視庁は、東京都渋谷区道玄坂2丁目のハプニングバー『Sleeping Beauty~眠れる森の美女~』の経営者の男(40)と、同店のスタッフで21~42歳の男女9人の計10人を公然わいせつ幇助(ほうじょ)の疑いで現行犯逮捕し、9日発表した。
保安課によると、10人は共謀し、5月7日深夜、同店の利用客の男(34)と女(27)=いずれも公然わいせつ容疑で現行犯逮捕=に個室を提供し、他の客の前でわいせつな行為をするのを手助けした疑いがある。
個室は『プレールーム』と呼ばれ、マジックミラー越しに外から様子が見える状態だった。
経営者の男を含む4人が容疑を否認し、残りの6人は容疑を認めているという。」
(令和4年5月9日に配信された朝日新聞DIGITALより引用)

【ハプニングバーとは】

ハプニングバーとは、会員制のバーの形態でお酒の提供を受けながら、様々な嗜好をもった会員同士がバーの中で交流し、場合によっては「ハプニング」と称して会員同士で性的接触を行うことができるバーのことを意味するようです。
各社報道によると、本件のハプニングバーの中には80人ほどの会員がおり、その多くが、ローション入りの水鉄砲を打ち合うイベントが開催に参加していたとのことです。

【公然わいせつ罪とは】

公然わいせつ罪は、刑法174条に規定されている犯罪で、「公然わいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」とされています。
公然わいせつ罪が成立するためには、①「公然と」②「わいせつな行為をした」という2つの要件を満たす必要があります。
簡単にそれぞれの要件について説明します。

公然わいせつ罪の1つ目の要件である「公然と」とは、不特定又は多数の人が認識することができる状態をいい、実際に不特定又は多数の人が認識する必要はありません。
この公然性の要件については、会員制の形を取って会員以外の外部の人が出入りできないような場所であっても、不特定又は多数の人が認識することができる状態であると考えられています。

報道によると、性行為を行った場所は、バーの中にあるプレールームと呼ばれる個室で、取り付けられたマジックミラーによって個室の様子を外から伺うことができる状態であった様です。
そのような状態の個室で性行為を行うことは、バーの中にいた多数の会員が認識できる状態で性行為を行ったといえますので、「公然と」との要件は満たされることになるでしょう。

公然わいせつ罪の2つ目の要件である「わいせつな行為」の「わいせつ」の意味については、性欲を刺激、興奮又は満足させる行為であり、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為のことをいいますが、その判断については、その時代の社会通念を踏まえた価値判断となりますので、「わいせつな行為」に当たるかについては難しい判断が必要になる場合があります。
もっとも、性交渉を見せる行為や、性器を露出する行為は「わいせつな行為」の典型例といえますので、プレールームで性行為を行っていた会員は、「わいせつな行為」をしたといえるでしょう。

【公然わいせつ罪の幇助とは】

報道では、実際に性交渉を行っていた2人が公然わいせつ罪の疑いで、その他の従業員が、公然わいせつ罪幇助の疑いで現行犯逮捕されたとあります。
幇助とは、刑法62条1項に規定されている犯罪類型で、犯罪を行うことを容易にするために手助けする行為のことをいいます。
本件では、外から部屋の内部を伺うことができるマジックミラーを付けた個室を会員に提供することで、不特定又は多数の会員が性行為を認識できるような状態にしたことが、公然わいせつを容易にしたといえますので、そのような個室を提供した従業員が公然わいせつ罪幇助犯として逮捕されたのでしょう。

【公然わいせつ罪、公然わいせつ罪の幇助の疑いで摘発された場合の弁護活動】

今回とりあげた事件の場合、バーの中にいた会員は、ハプニングバーがどのようなコンセプトのバーであるかを理解しており、バー内部で性行為が行われていることについても想定していたと考えられますので、そのような会員を公然わいせつ罪の被害に遭われてしまった方ということは出来ないでしょう。
従って、被害者の方がいない公然わいせつ事件の場合、被害者の方と示談をするという刑事弁護活動は行うことができません。

このような場合、罪を犯したことについて真摯な反省を示すことが非常に重要になります。
反省を示すひとつの方法として、日弁連や弁護士会、犯罪被害者の支援団体、更生保護施設などに贖罪寄付という寄付を行うことがありますが、贖罪寄付を行うにあたっては、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

贖罪寄付を行う前に、そもそも、贖罪寄付を行うことが有効な事件であるのか法律のプロである弁護士が判断する必要がありますし、また、贖罪寄付は、ただ単に寄付をすれば良いという訳ではないので、どのような寄付先を選べばよいのか、どの程度の額を寄付すれば反省の意思を有効に示すことができるのかといったことについて、弁護士からアドバイスを得る必要があるでしょう。
それに加えて、贖罪寄付はあくまで反省を示すひとつの要素でしかありませんので、真摯に反省しているということを、起訴前であれば検察官に、起訴された後であれば裁判官に理解してもらうためには、贖罪寄付をしたという事実だけでなく、さまざまな方法で伝える必要があります。
そうした検察官や裁判官とのやりとりには、弁護士を付けることが大変効果的です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、被害者の方がいない公然わいせつ事件において贖罪寄付などの刑事弁護活動の経験が豊富な弁護士が在籍しております。
公然わいせつ事件の摘発を受けてお困りの方、贖罪寄付をお考えになっている方は、まずは一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで御相談ください。

【報道解説】友人宅で浴室を借りた際にスマホ設置の盗撮事件

2022-05-11

【報道解説】友人宅で浴室を借りた際にスマホ設置の盗撮事件

愛知県日進市の盗撮事件の報道およびその刑事弁護活動としての示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道】

令和4年4月28日に、愛知県愛知警察署は、日進市立小学校常勤講師の男(24歳)を愛知県迷惑行為防止条例違反(のぞき見、盗撮)の疑いで逮捕した。
警察の発表によると、男は、令和4年4月23日午後10時半頃に、愛知県日進市の友人男性宅で、浴室の脱衣所に設置したスマートフォンを使い、男性の交際女性を動画で撮影した疑い。
この日、男は、友人男性宅に泊まることになっており、女性の入浴前に浴室を借りた際、カメラを起動させた状態で脱衣所にスマホを残したという。
(令和4年4月25日に配信された「読売新聞オンライン」より抜粋)

【スマホ設置による盗撮事件の刑事処罰とは】

盗撮事件を起こした場合には、各都道府県の制定する「迷惑防止条例」に違反するとして、刑事処罰を受けるケースが多いです。
愛知県迷惑防止条例での、盗撮罪の刑罰の法定刑は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています。

迷惑防止条例盗撮罪は、処罰の対象となる「盗撮行為の場所」が列挙されており、愛知県迷惑防止条例の場合には、①「公共の場所又は公共の乗物」、②「学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物」、③「住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での盗撮行為が、処罰の対象とされています。
上記の事例のような、友人宅の浴室内にスマホカメラを設置した場合には、③に該当して、迷惑防止条例違反に当たると考えられます。

愛知県迷惑防止条例 第2条の2(卑わいな行為の禁止)
第3項「何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」
1号「人の姿態をのぞき見し、又は撮影すること。」
2号「前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は人の姿態に向けること。」

【盗撮事件の被害者示談成立による事件解決】

友人宅でスマホ設置盗撮事件では、まずは刑事事件に強い弁護士と法律相談することで、警察取調べにおける供述対応を、弁護士とともに検討することが重要です。
また、盗撮事件は被害者のいる犯罪であり、被害届が出されることで捜査が開始されているため、被害者女性との示談交渉を行い、弁護士の側より謝罪と慰謝料支払いの意思を示すことで、被害者女性に許してもらう形での示談を成立させることも、刑事処罰の軽減のために重要な弁護活動となります。

トイレに不法侵入して、盗撮行為を行ったような盗撮事件のケースにおいては、住居侵入罪建造物侵入罪の成立も問題となることがあり、住居建造物の管理者との示談が必要となるような盗撮事件も想定されます。

まずは、スマホ設置盗撮事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、容疑者が身柄拘束されている逮捕案件であれば、逮捕当日に警察署に弁護士を派遣して、直接の弁護士接見(面会)のご依頼も承っております。

スマホ設置盗撮事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。

【報道解説】自宅トイレで知人を盗撮して逮捕

2022-05-08

【報道解説】自宅トイレで知人を盗撮して逮捕

トイレなど、通常人が衣服を身に着けない場所を盗撮することによる刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「自宅のトイレなどに小型カメラを設置し知人の女性を盗撮したとして、京都市内の男子大学生が京都府迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは京都市左京区の22歳の大学生の男です。
調べによりますと、男は去年3月から12月にかけて、自宅のトイレや洗面所に小型カメラを設置し、知り合いの女子大学生3人の下半身などを盗撮した疑いがもたれています。
男は歯磨き粉のチューブや植木鉢の中などにカメラを仕込み、盗撮した動画をツィッターに投稿していたということです。
男のパソコンやスマートフォンからは20人以上の女性の盗撮動画がおよそ400本見つかっていて、調べに対し男は『性的な欲求を満たすためと動画を売ったらお金になると思った』などと話しているということです。」
(令和4年4月12日にKBS京都より配信された報道より引用)

【報道解説】

京都府迷惑行為等防止条例では盗撮行為を禁止していますが、令和2年1月18日より、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為について、条例が一部改正されました。

改正前は「公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」(改正前京都府迷惑行為等防止条例第3条3項)と、「公衆」が立ち入る場所における、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為について禁止していました。
これに対して、現行の京都府迷惑行為等防止条例第3条3項は、そのような「公衆」の存在を前提とせずに、「住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での着衣の全部又は一部を着けない状態にある人の姿態を、著しく羞恥させ、又は不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法での盗撮行為を禁止し、盗撮行為が禁止される場所を拡大しました。

報道によれば、今回逮捕された男性が盗撮した場所は男性の自宅トイレや洗面所とのことですので、京都府迷惑行為等防止条例第3条3項1号違反として逮捕されたと考えられます。

ちなみに、京都府迷惑行為等防止条例第3条3項1号違反に違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることになり(同条例第10条2項)、常習として違反した場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることになります(同条例第10条4項)。

なお、引用元の報道では盗撮した動画をツイッターに投稿してきたとありますが、このような行為は、わいせつ物頒布等罪(刑法175条1項)に当たる可能性があります。
わいせつ電磁的記録頒布罪が成立する場合、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料が科されるか、または懲役と罰金の両方が科されることになります。

【昨年に報道された同様のケース】

ここ数年、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為が禁止される場所を拡大するため、迷惑行為等防止条例を改正した自治体が多いです。
改正によって、今回取り上げた報道と同様に自宅のトイレでの盗撮行為により逮捕・検挙されたケースが他の県でもありましたのでご紹介します。

1つ目は、兵庫県で自宅のトイレで知人女性を盗撮したとして逮捕されたケースです。
「自宅トイレに小型カメラ7台を仕掛けて女性を盗撮したとして、兵庫県警生活安全特別捜査隊と神戸西署は11日、県迷惑防止条例違反の疑いで神戸市西区の大学2年の男(27)を逮捕した。
逮捕容疑は昨年2月10日午後6時半から同9時半ごろまでと、同月18日午後4時から同7時半ごろまでの間、自宅のトイレに小型カメラ7台を設置し、知人の女性=当時(26)=を盗撮した疑い。容疑を認めているという。」
(令和3年10月11日に神戸新聞で配信された報道より引用)

兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第3条の2第3項は、平成28年に新しく追加された条文です。
同項は、「何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」とし、これに違反すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになります(同条例15条1項)。
改正によって、自分の家のトイレにおける盗撮行為を規制することが可能となり、紹介した兵庫県のケースも同条例第3条の2第3項違反の疑いで逮捕されたと考えられます。

2つ目は、香川県で自宅のトイレで知人女性を盗撮して書類送検されたケースです。
「自宅のトイレなどで知人女性を盗撮したとして、香川県警は21日、県警本部に勤務する30歳代の男性巡査長を県迷惑行為防止条例違反容疑で書類送検し、停職3か月の懲戒処分とした。巡査長は同日付で依願退職した。
発表では、巡査長は昨年8月~今年5月、自宅のトイレや脱衣所に小型カメラを設置し、5回にわたり、30、40歳代の知人女性2人の動画を盗撮した疑い。県警の調べに「女性の下着姿を見たいという欲求が抑えられなかった」と話しているという。
巡査長が必要以上にトイレやシャワーを勧めてくることを不審に思った30歳代の女性が5月、警察署に相談して発覚したという。」
(令和3年7月21日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

香川県においても、令和2年に迷惑行為等防止条例が改正される前までは、公衆の存在を前提とした場所における衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人に対する盗撮行為を規制対象にしていたため、自宅のトイレや脱衣所での盗撮行為は規制の対象外という状況でした。
こうした中で、令和2年の改正により追加された香川県迷惑行為等防止条例第3条3項は、「浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態」の盗撮行為を禁止することで、自宅のトイレや脱衣所における盗撮行為を規制対象とすることが可能になりました。
これに違反すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになります(同条例第12条1項)。
紹介した香川県のケースも、この香川県迷惑行為等防止条例第3条3項違反の疑いで書類送検されたと考えられます。

【盗撮の場合の刑事弁護活動】

盗撮事件の場合の刑事弁護活動としては、被害者の方との示談が重要になってくるでしょう。
弁護士に依頼して、被害者の方に対して謝罪の意思を示すことで示談を締結することが可能となれば、検察官による起訴を回避することも十分に考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、盗撮行為の被害者の方に対する示談交渉の経験が豊富な弁護士が在籍しております。
盗撮行為をしてしまってお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道紹介】わいせつな画像を要求して青少年健全育成条例違反で逮捕

2022-05-05

【報道紹介】わいせつな画像を要求して青少年健全育成条例違反で逮捕

18歳未満の女子高生にわいせつな画像を要求して各都道府県の青少年健全育成条例に違反した場合の刑事手続きと刑事適任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

埼玉県大宮東署は令和4年4月5日、埼玉県青少年健全育成条例違反の疑いで、東京都西東京市住吉町4丁目、会社員の男(47)を逮捕した。 
逮捕容疑は、令和3年年7月18日~8月1日、県内居住の10代の女子高校生が18歳に満たないことを知りながら、『定期契約しませんか』『毎月3千円とか』『画像も欲しいです』などとメッセージを送信し、わいせつ画像を要求した疑い。
同署によると、同年8月11日に女子高校生の両親が『スマートフォンの中を確認したところ、わいせつ画像が保存されていた』と同署に相談し、通信状況などから男とのやりとりを発見した。2人は共通の趣味から交流サイト(SNS)で知り合ったという。『裸が見たかった』と容疑を認めているという。」
(令和4年4月6日に埼玉新聞の報道より引用)

【報道解説】

埼玉県青少年健全育成条例第19条の3では、18歳未満の者である青少年に対して児童ポルノ等の提供を求めてはならないとされています。
児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定するものを言います。
具体的には、18歳未満の実在する児童性行為している様子や児童の裸などの写真、動画を撮影したDVD、メールで送らせた画像データといったものがあります。

そして、青少年に拒まれたにもかかわらず児童ポルノ等の提供を求めた場合には、罰金30万円が科されることになります(同条例第29条第3号イ、同条例第29条柱書)。
また、青少年を威迫し、欺き、困惑させたりする方法で児童ポルノ等の提供を求める場合や、青少年に対して実際に対償を供与して児童ポルノ等の提供を求める場合、対償の供与を申し込むか若しくは約束する方法で児童ポルノ等の提供を求めた場合にも、罰金30万円が科されることになります(同条例第29条第3号ロ、同条例第29条柱書)。

引用元では、18歳未満の女子高生に対して、「定期契約しませんか」「毎月3千円とか」「画像も欲しいです」といったメッセージを送信して、わいせつ画像を要求したとのことなので、青少年に対して対償を供与することを申し込んで児童ポルノ等の提供を求めた疑いがあるとして逮捕されたのでしょう。

【逮捕された場合の刑事弁護活動】

ご家族の中に青少年に対して児童ポルノ等の提供を求めた疑いで逮捕された方がいる場合、まずは弁護士に初回接見を依頼されることをお勧めします。

突然、警察に逮捕されてしまった場合、逮捕されたご本人の方はもちろんのこと、ご家族の方にとっても、いまどのような状況に置かれているのか、今後どうなってしまうのかといったことが何も分からず、不安になるかと思います。
初回接見によって、弁護士がご本人の方から事件についてお話をしっかりと伺うことで、事件の見通しや事件が今後どのような手続で進んでいくのかということについて、ご本人様・ご家族様にしっかりと御説明させて頂くことができます。
これによって、今後について不安に思う気持ちを和らげることが期待できるでしょう。

また、この初回接見をきっかけに弁護士逮捕直後に事件に介入すれば、逮捕後に続く勾留という更なる身柄拘束の処分を回避するための刑事弁護活動を取ることができる場合もあります。
勾留が決まってしまうと、原則として勾留請求がされた日から10日間、やむを得ない事情がある場合には最大で更に10日間、つまり、最長で20日間身柄を拘束されてしまう場合があります。
こうした長期の身柄拘束は、逮捕されたご本人の方の生活に与える影響が大きいです。
このような身柄拘束による影響を最小限にするためにも、逮捕直後の身柄解放に向けての弁護活動が重要になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、青少年健全育成条例違反の事件で勾留の決定を阻止した経験がある弁護士が在籍しております。
ご家族の中で、各自治体が定める青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕された方がいる場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度御連絡ください。

【解決事例】強制わいせつ罪の逮捕事案で起訴、執行猶予判決を獲得

2022-05-02

【解決事例】強制わいせつ罪の逮捕事案で起訴、執行猶予判決を獲得

成人男性による強制わいせつ罪被疑事件および起訴後の同被告事件に関する刑事弁護活動とその結果について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が紹介します。

【被疑事実】

本件は、男性被疑者Aが、埼玉県さいたま市の路上で声をかけた女性V1に対して、V1の股間や尻や胸等を触ったという強制わいせつ罪の事例です。

Aは犯行を行った翌日に強制わいせつ罪の疑いで逮捕され、Aが逮捕された警察から連絡を受けたA母より、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に刑事弁護の依頼が入りました。

【刑事弁護の経緯 身柄解放活動】

本件の弁護士契約を締結した時点でAは逮捕されていたため、Aが逮捕に引き続き身体拘束(勾留)をされないよう検察官に働きかけることが弁護人の最初の身柄解放活動となりました。
弁護人は、検察官に対して勾留請求をしないよう意見書を提出しましたが、検察官は勾留が必要と判断したため、裁判所へ勾留請求を行いました。

これに対し、弁護人は裁判所に対しても勾留を認容しないよう意見書を提出しましたが、裁判官はAに対して10日間の勾留決定を下しました。

刑事訴訟法では、決定された勾留に対して一度だけ不服申立て(準抗告)を行うことができるため、弁護人は迅速に準抗告申立てを行った結果、勾留決定を下した別の裁判体によって準抗告申立てが認められたため、Aは勾留決定が取り消され、釈放されることになりました。

以後、事件は在宅捜査へと切り替わりました。

【刑事弁護の経緯 余罪の発覚と再逮捕】

事件は在宅捜査となったため、Aが警察署や検察庁へ呼び出されて取調べを受ける際には、弁護人から適宜法的助言を与え、Aの取調べ対応を支えていきました。

この後、検察官は強制わいせつ罪の疑いで刑事訴追の必要があると判断し、Aの公判提起(起訴)を行いました。
以後、弁護人刑事裁判に備えて、捜査機関が収集した証拠資料等を謄写請求して読み込んだり、AとV1の主張の齟齬を検証するために犯行現場を見分する等して、今後の公判に備えて準備を進めました。

しかし、当初の強制わいせつ罪の発覚および逮捕から約2か月半ほど経過した時点で、この時点から数年前に、AがV1とは別の女性V2に対して、V2に対してAの男性器を触らせる等の強いてわいせつ行為を行っていたことが発覚し、別の強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。

この余罪に対しても、逮捕に引き続いて勾留をしないよう働きかけを行いましたが、余罪については不服申立て(準抗告)が通らなかったため、特別抗告を行い勾留の可否を争っていきました。

この余罪の強制わいせつ罪については、犯行時から公訴時効が経過したため、検察官はAを不起訴処分として釈放しました。

よって、これ以降、本罪のV1に対する強制わいせつ罪刑事裁判に向けて準備を再開しました。

【刑事弁護活動 公判活動と判決言渡し】

Aの主張としては、V1の同意があったという否認であり、Aの代理人である弁護人としては、起訴事実を否認する方向での証拠の収集や書面の準備を進めていくことになりました。

本件は、わいせつ行為の同意の有無について、被告人であるAと被害者V1の主張が真っ向から異なる形となったため、Aの公判は長期化し、公判は5回に渡って開廷されました。
結果として、Aに対して執行猶予付きの有罪判決が下されることになりました。

本件では、起訴から判決言渡しまで、約10カ月を要する大変長期の公判活動となりました。

【依頼者からの評価】

強制わいせつ罪のような法定刑の重い犯罪では、被害者との示談が成立しなければ、検察官によって公判提起(起訴)されるのが実務上多数です。

A母からは、Aの余罪逮捕でも迅速に対応し不起訴処分まで導いたこと、強制わいせつ罪の中でも悪質な犯罪態様である本件について執行猶予つき判決を獲得し、実刑を免れたことについて感謝の言葉をいただきました。

【刑事事件の解決のために】

前述のとおり、強制わいせつ罪のような法定刑の重い犯罪では、被害者との示談が成立しなければ、検察官によって公判提起(起訴)されるのが実務上多数です。

本件のように、被告人と被害者の主張が食い違う強制わいせつ罪のような性犯罪では、起訴される前の取調べ段階から、首尾一貫した事実の主張を行い、不当な事実認定をされないよう慎重に調書作成に対応するよう指導することが弁護人の大きな仕事となります。

このような強制わいせつ罪性犯罪起訴される刑事事件では、当初から起訴された後の公判活動も踏まえた適切な捜査対応の初動を行うことが重要であり、執行猶予つき判決など少しでも軽い処分を目指したい方は、刑事事件を専門とする多数の刑事裁判の経験のある弁護士弁護を依頼することが望ましいでしょう。

強制わいせつ罪などの性犯罪刑事事件化してお悩みの方、またはご家族が逮捕されてお悩みの方は、強制わいせつ罪を含む性犯罪の刑事裁判の経験豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所への弁護の依頼をご検討ください。

【報道解説】電車内の痴漢で逮捕

2022-04-26

【報道解説】電車内の痴漢で逮捕

東京都で電車内での痴漢の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。

【報道紹介】
 
電車内で20代の女性の体を触ったとして、警視庁が東京都迷惑防止条例違反の疑いで、同庁亀有署交通課に所属する30代の警部補の男を現行犯逮捕していたことが4日、捜査関係者への取材で分かった。
逮捕容疑は1日午後11時40分ごろ、東京都世田谷区を走行中の小田急線の電車内で女性の尻を触ったとしている。
捜査関係者によると、同僚と酒を飲んだ後だった。近くにいた女性の知人が気付いて取り押さえ、駅に駆け付けた警察官に引き渡した。既に釈放されているという。」
(令和4年4月4日に産経新聞より引用)

【痴漢事件で無罪を主張したい場合】

紹介した報道のように電車内での痴漢事件は、防犯カメラの映像などの客観的証拠が無いことが多く、痴漢をやっていないと刑事裁判で争う場合は、痴漢事件を疑われて起訴された被告人の供述や、被害に遭われた被害者の方や痴漢事件の目撃者の供述内容を検討して、どの供述が信用できるのか、どの供述が信用できないのかという形で争われることが多いです。

【痴漢事件で無罪となった裁判例】

電車内痴漢事件において、被害者の供述が信用できるかが問題になった裁判例のひとつに千葉地方裁判所平成27年1月14日判決があります。

この裁判例では、足の踏み場の無いほど混雑した電車内で、女性の服の上から左胸を手で揉んだという痴漢事件の犯人が、被害に遭った女性の正面で左向きに立っていた被告人であるのかが問題になりました。
被告人が犯人であると立証するための証拠が被害女性の供述しかなかったことから、裁判所は被害女性の供述に信用性があるかを検討しました。
裁判所は、検討の結果、被害女性の供述は信用性が乏しいと判断しました。
そのような判断の理由として、被害女性の犯人が被告人であると判断した供述についてはその判断過程に飛躍があったこと、痴漢行為時の被告人の体勢に関する供述が被害女性の憶測に基づいてなされた可能性があること、犯行内容に関わる重要な事実について被害女性が一貫した供述をしていないかった等の点を挙げることが出来ます。

他方で、裁判所は、被告人の供述は逮捕当初から一貫して犯行を否認しており、供述内容にも特に不自然・不合理な点はないと裁判所は判断しました。

以上を踏まえて、裁判所は、犯人が被告人であるということを証明することができないため、被告人は無罪であるという判決を下しました。

このように、供述の信用性が問題になる場合には、供述内容自体に不自然・不合理な点がないか、供述が捜査過程から一貫しているか、争いのない事実や客観的証拠によって立証される事実と供述内容を比較した際に、両者に整合性があるかという点が信用性判断のポイントになるでしょう。

【刑事事件の解決のために】

やってもいない痴漢を疑われて警察の捜査を受けてお困りの方は、刑事弁護の経験が豊富な弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士から取調べなどの警察の捜査に関してアドバイスを貰うことで、捜査過程において一貫した供述をしておくことが期待できるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、痴漢否認事件をはじめとした刑事事件に精通した弁護士が在籍しております。

痴漢冤罪でお困りの方は、刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談下さい。

【報道紹介】風俗店の経営者を装って準強制性交等罪で逮捕

2022-04-23

【報道紹介】風俗店の経営者を装って準強制性交等罪で逮捕

京都府で準強制性交等罪の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。

【報道紹介】

「京都府警中京署は令和4年4月14日、準強制性交の疑いで、京都市右京区のコンビニアルバイト店員の男(27)を逮捕した。
逮捕容疑は同年3月22日午後9~10時ごろ、中京区のビジネスホテルで、自分がデリバリーヘルス(派遣型風俗店)の経営者であるように装い、採用のために必要な勤務の講習と信じさせ、大阪市の無職女性(46)を乱暴した疑い。
中京署によると、男は同日に女性と交流サイト(SNS)で知り合ったという。」
(令和4年4月14日に京都新聞より引用)

【解説】

13歳以上の者に対して暴行脅迫を用いたうえで性交・口腔性交・肛門性交(この3つをまとめて「性交等」といいます)を行った場合は、刑法177条が規定する強制性交等罪が成立します。
今回報道でとり上げた事件では、準強制性交等罪の疑いで逮捕されたとあります。
この準強制性交等罪は、刑法178条2項に定められている犯罪で、強制性交等罪とは異なり、暴行脅迫を用いずに性交等を行った場合に成立し得る犯罪になります。
具体的には、準強制性交等罪は、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした」(刑法178条2項)場合に成立します。

「心神喪失」とは、失神・熟睡・泥酔・高度の精神障害などによって、自分に対して性交等が行われることの認識がない状態をいいます。
「抗拒不能」とは、自分に対して性交等がなされる認識はあるものの、物理的・心理的に抵抗できない場合をいいます。
報道では、逮捕された方が風俗店経営者であると装って、被害者の方に対して乱暴をしたとあります。
被害に遭われた方からすれば、勤務を希望する風俗店経営者と称する人から、これからの勤務の際に必要な講習であると性交を求められた際には、これを断って不採用となる事態を回避するために、性交を受け入れざるを得ない心理的状況であったのでしょう。
このように、風俗店勤務希望の人に対して風俗店経営者であると騙って、心理的に性交を断ることができなくなる状況を作ったことが、「抗拒不能」にさせたとして、準強制性交等罪の疑いで逮捕された可能性があります。

なお、準強制性交等罪が成立すると、5年以上の有期懲役の刑が科せられることになります。

【刑事事件の解決のために】

準強制性交等罪を犯してしまった場合の刑事弁護活動として、被害者の方との示談交渉が非常に有効です。
弁護士を通じて、被害者の方に誠心誠意謝罪の意思を示して、許してもらうことが出来れば、検察官による起訴を回避する可能性を得られます。

準強制性交等事件でお困りの方は、まずは刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、準強制性交等事件などの風俗に関連する事件についての弁護活動の経験が豊富な弁護士が在籍しております。

風俗関連のトラブルで警察沙汰になってしまった方や、ご家族の方が準強制性交等罪の疑いで逮捕されたという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】裸の自撮り動画と不正アプリで個人情報を抜き取り恐喝

2022-04-20

【報道解説】裸の自撮り動画と不正アプリで個人情報を抜き取り恐喝

京都府でSNS上で性的な自撮り動画を入手した上で、不正アプリをダウンロードさせて個人情報を抜き取り、更に金銭を要求するという恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「京都府警によると、府内に住む10歳代の男性は令和3年8月、出会い系サイトで知り合った女性に求められ、自身の下半身が映った動画をSNSで送った。
女性から『私のも見たかったらこれを入手して』と促され、指示されたアプリをインストールすると、文面が急変。『(男性の)動画を親族や友達に送りつける。嫌なら金を払え』とのメッセージが送られてきたという。女性側に伝えていないのに、男性がスマホの電話帳に登録する親族の電話番号も示されていた。」
「男性が府警に相談し、金銭的被害はなかったが、動画の回収はできないままだ。府警は、個人情報を抜き取る不正アプリが使われたとみている。」
「こうした不正アプリはネット上で多数確認されており、情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」(東京)によると、不正アプリをインストールすると、遠隔操作などで電話番号やメールアドレスなどを抜き取られてしまうという。」
不正アプリの送信者に対して、警察当局は不正指令電磁的記録供用罪の疑いなどで摘発している。」
(令和4年4月13日の読売新聞より引用)

【罰則の解説】

上記報道の被疑事実に関連して、同様の事案で成立する可能性がある犯罪としては、児童ポルノ法違反青少年健全育成条例違反不正指令電磁的記録供用罪恐喝罪が考えられます。

1.児童ポルノ法違反の可能性

まずは、児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)違反の可能性についてです。
報道では10代の男性が、出会い系アプリで知り合った女性の求めに応じて、下半身の自撮り動画を送ったとの記載があります。
仮に、下半身の自撮り動画を送った男性が18歳未満であれば、その動画を受け取った者は、児童ポルノ禁止法違反になり、刑罰が科される可能性があります。
具体的には、自分の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持・保管は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金になります(児童ポルノ禁止法7条1項)。
また、第三者に提供する目的で児童ポルノを所持・保管していた場合は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(児童ポルノ禁止法7条3項・2項)が、不特定又は多数の者に対して提供する目的で児童ポルノを所持・保管していた場合は、罪が重くなって、5年以下の懲役若しくは500万円の罰金が科せられ、又はこれらを併科されることになります(児童ポルノ禁止法7条7項・6項)。

2.各都道府県の青少年保護育成条例違反の可能性

なお、18歳未満の者に対して下半身の自撮り動画を要求はしたが、送ってもらえなかった場合には、青少年保護育成条例違反に問われる可能性がある自治体があります。
例えば、東京都では、東京都青少年健全育成条例の第18条の7に違反することになり、30万円以下の罰金となります(同条例第26条7号)。

3.不正指令電磁的記録供用罪の可能性

報道では、男性が動画を送った相手方の女性の裸を見たいがために、女性の指示に応じて女性が指定した不正アプリをダウンロードしたとあります。
この不正アプリをダウンロードさせる行為は、不正指令電磁的記録供用罪に当たる可能性があります。
不正指令電磁的記録供用罪は、正当な理由なく、コンピューターウイルスなどの「電磁的記録」を、他人のスマホやパソコンといった「電子計算機」のなかで、「実行の用に供する」場合に成立する犯罪です(刑法168条の2第2項)。
「実行の用に供する」とは、スマホやパソコンの使用者の意思とは無関係に、コンピューターウィルスを実行される状態に置くことを言います。
そのため、正式なアプリを装って、ウィルスが組み込まれている不正アプリをインストールさせる行為は「実行の用に供する」場合に当たることになるでしょう。
この不正指令電磁的記録供用罪が成立すると、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。

4.恐喝罪の成立可能性

続けて報道では、ダウンロードさせた不正アプリによって、男性のスマホから家族や友人の連絡先などの情報を抜き取った上で、下半身の動画を家族などに拡散されたくなければ金銭を支払えと要求したとの記載があります。
このような脅迫によって実際に金銭を受け取ると、恐喝罪(刑法249条1項)が成立することになるでしょう。
恐喝罪が成立すると、10年以下の懲役となります。
なお、恐喝罪は未遂でも処罰することになっていますので(刑法250条)、報道のように、被害者が金銭を支払う前に警察に相談したため、実際には金銭を支払わずに済んだような場合でも、脅迫をした側は処罰の対象になります。

【刑事事件の解決のために】

引用元の報道では「性行為や裸の画像をネット上で公表されたり、他人に送られたりしたとする相談は、昨年1628件あり、5年連続で過去最多を更新した。」とあります。
そのため、警察はこうした被害を防ぐために、積極的に捜査に乗り出している可能性があります。
SNSで繋がった児童から裸の画像等を入手した方、個人情報を抜き取るウィルスを相手方に送ってしまった方、裸の画像を拡散すると恐喝をした方などは、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談下さい。

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