Archive for the ‘報道解説’ Category
【報道解説】電車内の迷惑行為防止条例違反で略式起訴
【報道解説】下着窃盗事件の常習犯を逮捕
【報道解説】下着窃盗事件の常習犯を逮捕
下着窃盗事件の刑事処罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道】
派遣社員の男性(47歳)は、令和4年6月5日未明に、東京都江戸川区のアパート1階の女性宅にガラスを割って侵入し、下着など24点、9,000円相当を窃盗した疑いで、警視庁葛西警察署に逮捕された。
男性の自宅からは、女性の下着や服が100点以上押収された。
同じような被害は、この女性宅でこれまでも2件、近くのアパート1階の女性宅で4件確認されていて、警視庁は、男性の犯行とみて調べている。
男性は、2021年11月に同じような窃盗の罪で服役を終えて、出所していた。
(令和4年6月7日に配信された「FNNプライムオンライン」より抜粋)
【下着窃盗事件の刑事処罰とは】
下着窃盗事件を起こした場合には、「他人の財物を盗んだ」として窃盗罪に問われるとともに、「他人の住居に不法侵入した」として住居侵入罪に問われるケースが多いです。
住居や庭に不法侵入した場合には「窃盗罪と住居侵入罪」が成立し、他方で、コインランドリー等に不法侵入して下着窃盗事件を起こした場合には「窃盗罪と建造物侵入罪」が成立すると考えられます。
窃盗罪の刑事処罰の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされており、住居侵入罪や建造物侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」とされています。
下着窃盗事件の場合には、窃盗罪と住居侵入罪とは、手段と目的の関係にある「牽連犯」に当たることから、成立する犯罪のうち、最も重い犯罪の刑である窃盗罪の法定刑で、刑事処罰を受ける形になります。
・刑法 第235条(窃盗)
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
・刑法 第130条(住居侵入等)
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」
【被害者示談交渉による弁護活動】
下着窃盗事件は、被害者の存在する犯罪であるため、弁護士に示談交渉活動を依頼することで、被害者側に対して、謝罪や被害弁償・慰謝料支払いの意思を伝え、被害者からの許しの意思を含む示談を成立させることが、早期釈放や刑事処罰の軽減のための、重要な弁護活動となります。
下着窃盗事件においては、被害者側が加害者に恐怖心を抱いているケースが多く、加害者やその家族が、直接に被害者側との示談交渉を行うことは、原則として認められないことが多いです。
そこで、刑事事件に強い弁護士が示談交渉を仲介することで、弁護士だけに被害者側の連絡先が伝えられる形での示談交渉を進めることを、被害者側に打診することが、下着窃盗事件の示談解決に向けて必要となります。
まずは、下着窃盗事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕当日に、逮捕されている留置場に弁護士を派遣する、弁護士初回接見サービスのご依頼も承っております。
下着窃盗事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
【報道解説】男児狙いわいせつ事件で逮捕
【報道解説】男児狙いわいせつ事件で逮捕
児童買春事件と強制性交等事件の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
令和4年6月2日に、大阪府警少年課は、オンラインゲームで知り合った男子中学生に性的暴行を加えたとして、強制性交などの疑いで、住居不定の無職の男性(33歳)を逮捕した。
男性は、オンラインゲームや交流サイト(SNS)で知り合った男子小中学生に現金やプリペイドカードを渡し、見返りとしてわいせつな行為に及んでいたとみられる。
逮捕、送検容疑は、平成30年10月~令和4年1月、当時11歳~14歳の6人に、当時の自宅や車内に連れ込んで、性的暴行を加えたり、陰部を触ったりしたとしている。
男性のスマートフォンやパソコンには、少年の動画や画像が100点以上保存されており、府警は児童買春・ポルノ禁止法違反容疑でも捜査している。
(令和4年6月2日に配信された「産経新聞」より抜粋)
【児童買春事件と強制性交等事件の違い】
児童買春罪とは、18歳未満の児童に対して、現金などの報酬を渡して、あるいは報酬の約束をした上で、わいせつ行為をした場合に、成立する犯罪です。
基本的には、わいせつ行為をすることにつき、児童との同意がある事情を、前提とする犯罪となります。
・児童買春、児童ポルノ禁止法 第4条
「児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」
他方で、強制性交等罪とは、被害者との同意無しに、暴行や脅迫といった手段を用いて、性行為等をした場合に、成立する犯罪です。
また、13歳未満の被害者児童に対して性行為等をした場合には、被害者児童の同意があるような事例でも、強制性交等罪が成立します。
・刑法 第177条(強制性交等)
「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」
【強制性交等事件で逮捕後の釈放弁護活動】
性犯罪を起こして逮捕された場合には、まずは逮捕されてから2、3日間で「勾留」するかどうかの判断がなされ、勾留決定が出れば、そこから10日間の身柄拘束がなされます。
逮捕直後に弁護士を依頼することで、「勾留の回避」すなわち「逮捕後2、3日での早期釈放」に向けて、弁護士が捜査機関や裁判所に積極的な働きかけを行うことが、まずは重要となります。
勾留決定が出て、身柄拘束が長引くようなケースであっても、警察の取調べに対して、どのように認否の供述をしていくのかを弁護士に相談するとともに、被害者本人や被害者の保護者に対して、謝罪や慰謝料の支払い等の示談交渉を、弁護士を介して進めていくことが、早期釈放や刑事処罰の軽減のために、重要な弁護活動となります。
まずは、強制性交等事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕当日に、逮捕されている留置場に弁護士を派遣する、弁護士初回接見サービスのご依頼も承っております。
強制性交等事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
【報道解説】風俗店案内所のトラブルで傷害罪
【報道解説】風俗店案内所のトラブルで傷害罪
風俗店案内所で発生したトラブルが傷害事件へと発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
「東京都在住のAさんは、友人5人と風俗店を利用することになり、東京都町田市の路上で風俗店無料案内所を利用しました。
しかし、希望する条件と合う風俗店を紹介されなかったことに腹を立てたAさんらは、風俗店案内所の店員Vさんに対して、顔を殴るなどの暴行を加えて、重傷を負わせました。
なお、Vさんの怪我は、誰の暴行によって生じたものかはわかりませんでした。
Aさんらは、通報により駆け付けた警視庁町田警察署の警察官に現行犯逮捕されましたが、翌々日には釈放されました。」
(5月26日読売新聞より配信されたニュースを元にしたフィクションです)
【傷害罪はどのような場合に成立するのか】
人の顔を殴る、蹴るなどの行為は刑法208条が定める暴行罪に当たります。
そして、暴行の際に相手方に対して怪我を負わせてやろうという意思で相手方に対して怪我を負わせた場合はもちろんのこと、たとえ相手方に怪我を負わせてやろうという意思がなくても、暴行自体を自発的に行い、その結果相手方に対して怪我を負わせた場合は刑法204罪が定める傷害罪が成立することになります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役刑、又は50万円以下の罰金刑となっています。
【誰が怪我を負わせたかが不明な場合はどうなるのか】
刑法の一般論として、犯罪の結果が誰の行為によって生じたのか明らかではない場合は、通常は罪に問われることはありません。
しかし、今回取り上げた事例のように、複数の者の暴行によって傷害の結果が生じたものの、誰の暴行によって傷害の結果が生じたかが明らかでない場合は、暴行に参加した者について傷害罪が成立することになります。
そのため、Aさんには傷害罪が成立することになるでしょう。
Aさんに傷害罪が成立することになる説明としては、次の2つが考えられます。
【傷害罪が成立する可能性―共謀】
まず、考えられる説明として、Aさんと友人たちに傷害罪の共同正犯(刑法60条、204条)が成立している場合があります。
刑法60条には、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定されています。
これは、2人以上の人が共同して犯罪を実行した場合は、他人が行った行為についても、自分が行ったものとして責任を追うということを意味しています。
取り上げた事例においては、Aさんと友人たちの間で、「一緒に風俗店案内所の店員Vさんを暴行しよう」という、共同して犯罪を行うことを内容とする共謀が成立し、そのような共謀に基づいて暴行に及んでいた場合には、Aさんは、たとえ自身の暴行によってVさんを怪我を負わせていなくても傷害罪の共同正犯が成立することになります。
従って、共謀がある場合、Aさんには傷害罪が成立することになります。
【傷害罪が成立する可能性―同時傷害の特例】
それでは、Aさんと友人たちの間で共謀が存在していない場合は、Aさんは傷害罪の責任を負わないと考えられそうですが、傷害罪については、刑法207条の同時傷害の特例が適用されることになりますので、Aさんは傷害罪の責任を負うことになります。
2人以上の複数人で暴行を加えて傷害を負わせた場合には、暴行に参加した者全員の暴行によって傷害の結果が発生しているものの、誰がどの程度の傷害結果を生じさせたのか、その軽重が分からない場合や、そもそも誰の暴行によって傷害結果が生じたのかが分からない場合がよくありますが、このような場合を例外的に共同正犯として取り扱うとするのが刑法207条の同時傷害の特例の規定です。
今回取り上げた事例においては、Aさんを含めた合計6人で、風俗店案内所の店員Vさんを暴行して傷害を負わせていますから、仮に共謀の事実が認められなかったとしても、この刑法207条が適用されることになりますので、Aさんらは、傷害罪の共同正犯として扱われることになります。
従って、共謀がない場合でも、Aさんは傷害罪についての責任を負うことになるでしょう。
【傷害事件の場合の刑事弁護活動】
今回取り上げた事例では、Aさんは、逮捕後釈放されていますが、釈放されたからといって事件が終了した訳ではありません。
今後は、検察官がAさんを傷害罪で起訴するかどうかの判断を下すまで、Aさんは在宅での捜査が続くことになるでしょう。
傷害事件のように、被害者の方がいる事件の場合、被害者の方との示談交渉が大事になります。
弁護士を通じて、被害者の方に対して謝罪と被害の回復を申し入れることによって、被害者の方の処罰感情を和らげることが出来れば、起訴を回避することも可能になるでしょう。
示談交渉については決まった方法というものがありませんので、これまでの弁護士の経験によるところが大きい弁護活動といえるでしょう。
そのため、示談交渉を依頼する弁護士選びは非常に重要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う事務所で、傷害事件の被害者の方と示談を締結し、起訴を回避した経験が豊富な弁護士が在籍しております。
風俗店案内所の店員に怪我を負わせてしまい、傷害罪で警察の捜査を受けている方、傷害罪について起訴を回避したいとお考えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度御相談下さい。
【報道解説】強盗致傷罪で逮捕
【報道解説】強盗致傷罪で逮捕
金銭を奪うために加えた暴行によって相手方を怪我をさせたことにより、強盗致傷罪の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「女性になりすましてSNSで呼び出した高校生に暴行を加え、金を奪おうとした疑いで、21歳の男ら2人が逮捕された。
A容疑者(21)らは2022年3月、埼玉県川越市の路上で、男子高校生に『金を出せ』と脅して暴行を加え、けがをさせた疑いが持たれている。
A容疑者らは、SNSで若い女性になりすまし、高校生を呼び出していたという。」
(令和4年5月24日にFNNプライムオンラインにて配信された報道より引用)
【強盗致傷罪とは】
刑法240条は、強盗致傷罪について規定しています。
強盗致傷罪が成立するためには、「強盗が」、強盗の機会に、「人を負傷させた」という要件を充たす必要があります。
引用した報道では詳しい事実関係については明らかとなっていませんが、Aさんが高校生から金銭を奪うために加えた暴行が、高校生の反抗を抑圧する程度の暴行であれば、Aさんは「強盗」に当たることになるでしょう。
そして、そのような強盗の手段として用いられた暴行によって高校生が怪我をしていますので、Aさんは強盗の機会に「人を負傷させた」として強盗致傷罪の疑いで逮捕されたと考えられます。
なお、報道では「金を奪おうとした」との記載にとどまり、実際にAさんが金銭を高校生から奪ったかについては定かではありませんが、仮にAさんが金銭を奪っていなくとも、金銭を奪うために用いた暴行によって相手方を怪我をさせたのであれば、刑法243条が定める未遂罪は成立することはなく、強盗致傷罪の既遂が成立することになります。
強盗致傷罪の法定刑は、無期又は6年以上の懲役刑で、罰金刑が定められておらず、最も軽い刑で6年の懲役刑となっていますので、様々な犯罪について規定する刑法の中において、科される刑罰が大変重い犯罪です。
【強盗致傷罪で起訴された場合】
強盗致傷罪が起訴されると次に示すように通常の公判手続とは異なる点があります。
まず、強盗致傷罪のように法定刑で無期懲役が定められている事件が起訴された場合、その事件は、裁判員裁判の対象になります。
裁判員裁判制度は、職業裁判官と一緒に、国民の中から抽選で選ばれた人が裁判員として裁判に参加して、有罪・無罪の判断、有罪の場合の量刑をどうするかを決める裁判制度です。
裁判員裁判制度においては、量刑を判断にあたっては国民感情が反映されることになりますので、職業裁判官のみによって行われる通常の裁判に比べて、量刑が重くなる傾向があると言われています。
また、裁判員裁判の対象となる事件については、公判が開かれる前に公判前整理手続と呼ばれる手続が行われることになります。
公判前整理手続は、第1回公判期日の前に、裁判所、検察官、弁護人が事件の争点を明確にして、証拠の整理を行い、これからどのように審理を進めていくかという審理計画を作成することを目的とする手続ですが、審理計画の作成に時間がかかってしまい、結果として公判が長引いてしまうおそれがあります。
【強盗致傷罪の弁護活動】
このように強盗致傷罪は法定刑が重く重大な犯罪ですが、被害者に対する示談の有無によって、刑事処罰の可能性を低くする可能性が残されています。
事件を起訴するか否かを決定する権限は検察官にあり、検察官が事件を起訴するか否かの判断をするにあたっては、被害に遭われてしまった方の処罰感情を重視する傾向にあります。
そのため、検察官が起訴・不起訴の判断を下すまでに、被害に遭われてしまった方に対して謝罪と被害の回復を行い、示談を締結することができれば、軽い処分となる可能性を高めることができます。
【軽い処分を目指したい方は】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱っている事務所です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、被害者の方との示談交渉により、示談を締結することができ、強盗致傷罪から窃盗罪と傷害罪の2罪に分離させた結果、不起訴処分を獲得した経験のある弁護士が在籍しております。
強盗致傷罪を起こしてしまいお困りの方、強盗致傷罪について少しでも軽い処分を目指したい方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度御相談下さい。
【報道解説】高校生が児童ポルノ禁止法違反で逮捕
【報道解説】高校生が児童ポルノ禁止法違反で逮捕
男子高校生が女子高校生とみだらな行為の様子をスマートフォンで撮影したことを理由に、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「兵庫県警明石署は20日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、神戸市西区の男子高校生(16)を逮捕した。
逮捕容疑は2月中旬ごろ、交際していた県内の女子高校生(16)に対し、18歳未満と知りながらわいせつな行為をし、その様子をスマートフォンで撮影した疑い。調べに対し、容疑を認めているという。
女子高校生の保護者が5月12日に同署に相談し、容疑が発覚した。」
(令和4年5月20日に配信された神戸新聞NEXTより引用)
【児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)とは】
報道では、交際相手の16歳の女子高校生とのわいせつな行為をしている様子をスマートフォンで撮影したとありますが、児童買春・児童ポルノ禁止法(以下「児童ポルノ禁止法」とします。)「児童ポルノ」を「製造」する行為に対して罰則を設けています。
本件では、どのような動画が「児童ポルノ」に当たるのでしょうか。
わいせつな行為が具体的にどのような行為であるかについては報道からではわかりませんが、16歳同士の男子高校生と女子高校生との性的行為を撮影したのであれば、以下の2つのうちのいずれかの児童ポルノに当たることになるでしょう。
仮に、女子高校生を相手方とする性交又は性交類似行為の様子を撮影したのであれば児童ポルノ禁止法第2条3項1号が定める児童ポルノに当たることになります。
また、1号が定める児童ポルノに当たらなくても、女子高校生の性器等を触る様子か、又は女子高校生が他人の性器等を触る様子であって、性欲を興奮させ又は刺激させるものであれば、児童ポルノ禁止法第2条3項2号が定める児童ポルノに当たることになります。
次に、「製造」についてですが、児童ポルノ禁止法では、児童ポルノの製造を、
①提供目的での製造(児童ポルノ禁止法7条3項)
②単純な製造(同法7条4項)
③盗撮による製造(同法7条5項)
④不特定多数の者への提供又は公然陳列の目的での製造(同法7条7項)
の4つに分けて規定しています。
①②③については、法定刑が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられることになり、④については、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられることになります。
報道では、男子高校生がどのような目的で児童ポルノを製造したかについては明らかになっていませんが、例えば、後で自分で見返す目的で製造したということであれば、②の単純な製造に当たることになるでしょう。
【同い年の交際相手であっても児童ポルノ禁止法違反になるのか】
報道では、逮捕された16歳の男子高校生と、被害にあった16歳の女子高校生は交際関係にあったとありますが、この事情は児童ポルノ禁止法違反の成立に何か影響があるのでしょうか。
18歳未満の青少年が同じく青少年に対して行った性行為については、罰則が科されない場合があります。
例えば、事件があった兵庫県が定める兵庫県青少年愛護条例第21条1項では、青少年に対してみだらな性行為やわいせつな行為を行うことが禁止されています。
これに違反すると、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることが原則となります(同条例第30条1項2号)が、例外として、この罰則規定は青少年には適用されないことになっています(同条例第32条)。
そのため、16歳の男子高校生が16歳の女子高校生に対して行った性行為については、兵庫県青少年愛護条例の適用の対象外になりますので刑罰が科されることはありません。
ただし、児童ポルノ禁止法では、兵庫県愛護条例第32条のような青少年に対して刑罰を問わないとする免責規定はありません。
従って、16歳の男子高校生が交際相手の16歳の女子高校生とのわいせつな行為を撮影した場合には、児童ポルノ禁止法違反に問われることになります。
【高校生のお子さんが逮捕されてお困りの方は】
未成年である16歳の高校生の方が逮捕された場合、成人の場合と同様に最長20日間の勾留、又は最長10日間の勾留に代わる観護措置として、引き続き身柄を拘束する処分が続く場合が多いです。
身柄拘束が長引くと、学校生活や社会生活に与える影響が大きいです。
そのような長期の身柄拘束を回避するためには、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらいましょう。
この初回接見によって、突然逮捕されて不安に思っているお子さんの不安を和らげる効果が期待できますし、また、事件の見通しや今後の流れについて弁護士から説明を受けることもできるでしょう。
そして、この初回接見をきっかけにして弁護士が事件に早期に介入することが出来れば、長期の身柄拘束を回避するための弁護活動を取ることができますので、早期の身柄解放の可能性を上げることができるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件において、逮捕直後に早期に事件に介入できたことにより、勾留又は勾留に代わる観護措置を回避した経験を持つ弁護士が在籍しております。
児童ポルノ法違反の疑いで、ご家族の中で逮捕された方がいてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談下さい。
【報道解説】わいせつ電磁的記録記録媒体陳列で逮捕
【報道解説】わいせつ電磁的記録記録媒体陳列で逮捕
動画販売サイトでわいせつ動画を公開したことにより、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「動画投稿サイト『FC2コンテンツマーケット』にわいせつ動画を公開したとして、警視庁は19日、無職の男性(43)をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕したと発表した。
2020年10月以降、自分で撮影したわいせつ動画113本をFC2で販売し、約2億9400万円を売り上げたとみて調べている。
発表によると、男性は昨年12月~今年4月、SNSなどで募集した女性と一緒に撮影したわいせつ動画2本をFC2に公開し、不特定多数が閲覧できる状態にした疑い。
逮捕は17日。『生活費を稼ぐためだった』と供述している。」
(5月19日読売新聞オンラインより一部引用)
【わいせつ電磁的記録記録媒体陳列とは】
刑法175条1項では、善良な性秩序を維持するために、わいせつな画像や動画を公然陳列した者に、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処すか、又は懲役及び罰金を併科するとしています。
ここでいう公然陳列とは、わいせつな画像や動画の内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいいます。
無修正の性交渉の動画を動画販売サイトにアップロードする行為は、わいせつな動画を不特定又は多数の人が認識できる状態に置く行為といえるでしょうから、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪が成立することになるでしょう。
【逮捕されたらスピードが勝負】
警察に逮捕された場合、多くの場合は以下のような流れで手続きが進むことになります。
警察が逮捕した人(被疑者)を取り調べた結果、被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると判断した場合、警察は逮捕してから48時間以内に事件を検察に送致しなければなりません。
もっとも、実際には、警察が48時間経過するぎりぎりまで取り調べてから事件を検察に送致するということはなく、遅くとも逮捕された日の翌々日のお昼ごろまでには事件を検察に送致する場合が多いです。
事件の送致を受けた検察官は、被疑者を取調べた上で、検察官が被害者の身柄を更に拘束する必要があると判断した場合は、裁判官に対して勾留の請求をします。
この勾留の請求は、検察官が事件の送致された被疑者を受け取ってから、24時間以内、被疑者が逮捕されてから72時間以内に行う必要があります。
勾留の請求を受けた裁判官が事件の記録を読み、被疑者から事件についての話を聴いたうえで、勾留を認める判断がなされると勾留が正式に決定されることになります。
勾留が決定してしまうと、原則10日間、勾留期間が延長されると更に10日間、合計すると最大20日間にわたって身柄を拘束される場合がありますので、勾留の開始決定はその人の社会生活に重大な影響を及ぼすことになります。
そのような勾留による影響を避けたい場合、勾留を回避する弁護活動が非常に重要になりますので、ご家族の誰かが逮捕されたという連絡を受けた場合、いちはやく弁護士に初回接見を依頼して、弁護士を逮捕されたご家族の元へと派遣されることをお勧めします。
この初回接見によって、事件の見通しや今後の事件の流れなどについて弁護士から説明を受けることができるでしょう。
そして、この初回接見をきっかけにして弁護士が逮捕直後に事件に介入することができれば、事件の送致を受けた検察官や勾留請求を受けた裁判官に、勾留を行う必要がないことを主張するといった、勾留決定を回避するための弁護活動をとることが可能となります。
弁護士のこのような弁護活動によって、勾留の開始決定を回避する可能性を上げることが期待できるでしょう。
俗に言う、「逮捕直後はスピードが勝負」というのは、逮捕後、勾留の開始決定がなされるまでには時間の制約があることからスピーディーに手続が進んでしまうため、勾留を阻止するための弁護活動をとるためには、いち早く弁護士が事件に介入する必要があるということを意味しています。
もちろん、勾留開始が決定した後でも、勾留の開始について準抗告などの不服を申立てる手段がありますので、勾留が決定したからといって、諦めずに弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、勾留の開始決定を阻止した経験のある弁護士や、勾留の延長を阻止した経験がある弁護士が在籍しております。
ご家族の中で、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の疑いで逮捕された方がいてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで、ご相談下さい。
【報道解説】公然わいせつ罪(幇助含む)で逮捕
【報道解説】公然わいせつ罪(幇助含む)で逮捕
公然わいせつ罪および公然わいせつ罪の幇助の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「客の男女に公然とわいせつな行為をする場所を提供したとして、警視庁は、東京都渋谷区道玄坂2丁目のハプニングバー『Sleeping Beauty~眠れる森の美女~』の経営者の男(40)と、同店のスタッフで21~42歳の男女9人の計10人を公然わいせつ幇助(ほうじょ)の疑いで現行犯逮捕し、9日発表した。
保安課によると、10人は共謀し、5月7日深夜、同店の利用客の男(34)と女(27)=いずれも公然わいせつ容疑で現行犯逮捕=に個室を提供し、他の客の前でわいせつな行為をするのを手助けした疑いがある。
個室は『プレールーム』と呼ばれ、マジックミラー越しに外から様子が見える状態だった。
経営者の男を含む4人が容疑を否認し、残りの6人は容疑を認めているという。」
(令和4年5月9日に配信された朝日新聞DIGITALより引用)
【ハプニングバーとは】
ハプニングバーとは、会員制のバーの形態でお酒の提供を受けながら、様々な嗜好をもった会員同士がバーの中で交流し、場合によっては「ハプニング」と称して会員同士で性的接触を行うことができるバーのことを意味するようです。
各社報道によると、本件のハプニングバーの中には80人ほどの会員がおり、その多くが、ローション入りの水鉄砲を打ち合うイベントが開催に参加していたとのことです。
【公然わいせつ罪とは】
公然わいせつ罪は、刑法174条に規定されている犯罪で、「公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」とされています。
公然わいせつ罪が成立するためには、①「公然と」②「わいせつな行為をした」という2つの要件を満たす必要があります。
簡単にそれぞれの要件について説明します。
公然わいせつ罪の1つ目の要件である「公然と」とは、不特定又は多数の人が認識することができる状態をいい、実際に不特定又は多数の人が認識する必要はありません。
この公然性の要件については、会員制の形を取って会員以外の外部の人が出入りできないような場所であっても、不特定又は多数の人が認識することができる状態であると考えられています。
報道によると、性行為を行った場所は、バーの中にあるプレールームと呼ばれる個室で、取り付けられたマジックミラーによって個室の様子を外から伺うことができる状態であった様です。
そのような状態の個室で性行為を行うことは、バーの中にいた多数の会員が認識できる状態で性行為を行ったといえますので、「公然と」との要件は満たされることになるでしょう。
公然わいせつ罪の2つ目の要件である「わいせつな行為」の「わいせつ」の意味については、性欲を刺激、興奮又は満足させる行為であり、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為のことをいいますが、その判断については、その時代の社会通念を踏まえた価値判断となりますので、「わいせつな行為」に当たるかについては難しい判断が必要になる場合があります。
もっとも、性交渉を見せる行為や、性器を露出する行為は「わいせつな行為」の典型例といえますので、プレールームで性行為を行っていた会員は、「わいせつな行為」をしたといえるでしょう。
【公然わいせつ罪の幇助とは】
報道では、実際に性交渉を行っていた2人が公然わいせつ罪の疑いで、その他の従業員が、公然わいせつ罪の幇助の疑いで現行犯逮捕されたとあります。
幇助とは、刑法62条1項に規定されている犯罪類型で、犯罪を行うことを容易にするために手助けする行為のことをいいます。
本件では、外から部屋の内部を伺うことができるマジックミラーを付けた個室を会員に提供することで、不特定又は多数の会員が性行為を認識できるような状態にしたことが、公然わいせつを容易にしたといえますので、そのような個室を提供した従業員が公然わいせつ罪の幇助犯として逮捕されたのでしょう。
【公然わいせつ罪、公然わいせつ罪の幇助の疑いで摘発された場合の弁護活動】
今回とりあげた事件の場合、バーの中にいた会員は、ハプニングバーがどのようなコンセプトのバーであるかを理解しており、バー内部で性行為が行われていることについても想定していたと考えられますので、そのような会員を公然わいせつ罪の被害に遭われてしまった方ということは出来ないでしょう。
従って、被害者の方がいない公然わいせつ事件の場合、被害者の方と示談をするという刑事弁護活動は行うことができません。
このような場合、罪を犯したことについて真摯な反省を示すことが非常に重要になります。
反省を示すひとつの方法として、日弁連や弁護士会、犯罪被害者の支援団体、更生保護施設などに贖罪寄付という寄付を行うことがありますが、贖罪寄付を行うにあたっては、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
贖罪寄付を行う前に、そもそも、贖罪寄付を行うことが有効な事件であるのか法律のプロである弁護士が判断する必要がありますし、また、贖罪寄付は、ただ単に寄付をすれば良いという訳ではないので、どのような寄付先を選べばよいのか、どの程度の額を寄付すれば反省の意思を有効に示すことができるのかといったことについて、弁護士からアドバイスを得る必要があるでしょう。
それに加えて、贖罪寄付はあくまで反省を示すひとつの要素でしかありませんので、真摯に反省しているということを、起訴前であれば検察官に、起訴された後であれば裁判官に理解してもらうためには、贖罪寄付をしたという事実だけでなく、さまざまな方法で伝える必要があります。
そうした検察官や裁判官とのやりとりには、弁護士を付けることが大変効果的です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、被害者の方がいない公然わいせつ事件において贖罪寄付などの刑事弁護活動の経験が豊富な弁護士が在籍しております。
公然わいせつ事件の摘発を受けてお困りの方、贖罪寄付をお考えになっている方は、まずは一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで御相談ください。
【報道解説】友人宅で浴室を借りた際にスマホ設置の盗撮事件
【報道解説】友人宅で浴室を借りた際にスマホ設置の盗撮事件
愛知県日進市の盗撮事件の報道およびその刑事弁護活動としての示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道】
令和4年4月28日に、愛知県愛知警察署は、日進市立小学校常勤講師の男(24歳)を愛知県迷惑行為防止条例違反(のぞき見、盗撮)の疑いで逮捕した。
警察の発表によると、男は、令和4年4月23日午後10時半頃に、愛知県日進市の友人男性宅で、浴室の脱衣所に設置したスマートフォンを使い、男性の交際女性を動画で撮影した疑い。
この日、男は、友人男性宅に泊まることになっており、女性の入浴前に浴室を借りた際、カメラを起動させた状態で脱衣所にスマホを残したという。
(令和4年4月25日に配信された「読売新聞オンライン」より抜粋)
【スマホ設置による盗撮事件の刑事処罰とは】
盗撮事件を起こした場合には、各都道府県の制定する「迷惑防止条例」に違反するとして、刑事処罰を受けるケースが多いです。
愛知県迷惑防止条例での、盗撮罪の刑罰の法定刑は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています。
迷惑防止条例の盗撮罪は、処罰の対象となる「盗撮行為の場所」が列挙されており、愛知県迷惑防止条例の場合には、①「公共の場所又は公共の乗物」、②「学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物」、③「住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での盗撮行為が、処罰の対象とされています。
上記の事例のような、友人宅の浴室内にスマホカメラを設置した場合には、③に該当して、迷惑防止条例違反に当たると考えられます。
・愛知県迷惑防止条例 第2条の2(卑わいな行為の禁止)
第3項「何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」
1号「人の姿態をのぞき見し、又は撮影すること。」
2号「前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は人の姿態に向けること。」
【盗撮事件の被害者示談成立による事件解決】
友人宅でスマホ設置の盗撮事件では、まずは刑事事件に強い弁護士と法律相談することで、警察取調べにおける供述対応を、弁護士とともに検討することが重要です。
また、盗撮事件は被害者のいる犯罪であり、被害届が出されることで捜査が開始されているため、被害者女性との示談交渉を行い、弁護士の側より謝罪と慰謝料支払いの意思を示すことで、被害者女性に許してもらう形での示談を成立させることも、刑事処罰の軽減のために重要な弁護活動となります。
トイレに不法侵入して、盗撮行為を行ったような盗撮事件のケースにおいては、住居侵入罪や建造物侵入罪の成立も問題となることがあり、住居や建造物の管理者との示談が必要となるような盗撮事件も想定されます。
まずは、スマホ設置盗撮事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、容疑者が身柄拘束されている逮捕案件であれば、逮捕当日に警察署に弁護士を派遣して、直接の弁護士接見(面会)のご依頼も承っております。
スマホ設置盗撮事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
【報道解説】自宅トイレで知人を盗撮して逮捕
【報道解説】自宅トイレで知人を盗撮して逮捕
トイレなど、通常人が衣服を身に着けない場所を盗撮することによる刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「自宅のトイレなどに小型カメラを設置し知人の女性を盗撮したとして、京都市内の男子大学生が京都府迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは京都市左京区の22歳の大学生の男です。
調べによりますと、男は去年3月から12月にかけて、自宅のトイレや洗面所に小型カメラを設置し、知り合いの女子大学生3人の下半身などを盗撮した疑いがもたれています。
男は歯磨き粉のチューブや植木鉢の中などにカメラを仕込み、盗撮した動画をツィッターに投稿していたということです。
男のパソコンやスマートフォンからは20人以上の女性の盗撮動画がおよそ400本見つかっていて、調べに対し男は『性的な欲求を満たすためと動画を売ったらお金になると思った』などと話しているということです。」
(令和4年4月12日にKBS京都より配信された報道より引用)
【報道解説】
京都府迷惑行為等防止条例では盗撮行為を禁止していますが、令和2年1月18日より、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為について、条例が一部改正されました。
改正前は「公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」(改正前京都府迷惑行為等防止条例第3条3項)と、「公衆」が立ち入る場所における、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為について禁止していました。
これに対して、現行の京都府迷惑行為等防止条例第3条3項は、そのような「公衆」の存在を前提とせずに、「住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での着衣の全部又は一部を着けない状態にある人の姿態を、著しく羞恥させ、又は不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法での盗撮行為を禁止し、盗撮行為が禁止される場所を拡大しました。
報道によれば、今回逮捕された男性が盗撮した場所は男性の自宅トイレや洗面所とのことですので、京都府迷惑行為等防止条例第3条3項1号違反として逮捕されたと考えられます。
ちなみに、京都府迷惑行為等防止条例第3条3項1号違反に違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることになり(同条例第10条2項)、常習として違反した場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることになります(同条例第10条4項)。
なお、引用元の報道では盗撮した動画をツイッターに投稿してきたとありますが、このような行為は、わいせつ物頒布等罪(刑法175条1項)に当たる可能性があります。
わいせつ電磁的記録頒布罪が成立する場合、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料が科されるか、または懲役と罰金の両方が科されることになります。
【昨年に報道された同様のケース】
ここ数年、着衣の全部又は一部を着けない状態の人に対する盗撮行為が禁止される場所を拡大するため、迷惑行為等防止条例を改正した自治体が多いです。
改正によって、今回取り上げた報道と同様に自宅のトイレでの盗撮行為により逮捕・検挙されたケースが他の県でもありましたのでご紹介します。
1つ目は、兵庫県で自宅のトイレで知人女性を盗撮したとして逮捕されたケースです。
「自宅トイレに小型カメラ7台を仕掛けて女性を盗撮したとして、兵庫県警生活安全特別捜査隊と神戸西署は11日、県迷惑防止条例違反の疑いで神戸市西区の大学2年の男(27)を逮捕した。
逮捕容疑は昨年2月10日午後6時半から同9時半ごろまでと、同月18日午後4時から同7時半ごろまでの間、自宅のトイレに小型カメラ7台を設置し、知人の女性=当時(26)=を盗撮した疑い。容疑を認めているという。」
(令和3年10月11日に神戸新聞で配信された報道より引用)
兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第3条の2第3項は、平成28年に新しく追加された条文です。
同項は、「何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」とし、これに違反すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになります(同条例15条1項)。
改正によって、自分の家のトイレにおける盗撮行為を規制することが可能となり、紹介した兵庫県のケースも同条例第3条の2第3項違反の疑いで逮捕されたと考えられます。
2つ目は、香川県で自宅のトイレで知人女性を盗撮して書類送検されたケースです。
「自宅のトイレなどで知人女性を盗撮したとして、香川県警は21日、県警本部に勤務する30歳代の男性巡査長を県迷惑行為防止条例違反容疑で書類送検し、停職3か月の懲戒処分とした。巡査長は同日付で依願退職した。
発表では、巡査長は昨年8月~今年5月、自宅のトイレや脱衣所に小型カメラを設置し、5回にわたり、30、40歳代の知人女性2人の動画を盗撮した疑い。県警の調べに「女性の下着姿を見たいという欲求が抑えられなかった」と話しているという。
巡査長が必要以上にトイレやシャワーを勧めてくることを不審に思った30歳代の女性が5月、警察署に相談して発覚したという。」
(令和3年7月21日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)
香川県においても、令和2年に迷惑行為等防止条例が改正される前までは、公衆の存在を前提とした場所における衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人に対する盗撮行為を規制対象にしていたため、自宅のトイレや脱衣所での盗撮行為は規制の対象外という状況でした。
こうした中で、令和2年の改正により追加された香川県迷惑行為等防止条例第3条3項は、「浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態」の盗撮行為を禁止することで、自宅のトイレや脱衣所における盗撮行為を規制対象とすることが可能になりました。
これに違反すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになります(同条例第12条1項)。
紹介した香川県のケースも、この香川県迷惑行為等防止条例第3条3項違反の疑いで書類送検されたと考えられます。
【盗撮の場合の刑事弁護活動】
盗撮事件の場合の刑事弁護活動としては、被害者の方との示談が重要になってくるでしょう。
弁護士に依頼して、被害者の方に対して謝罪の意思を示すことで示談を締結することが可能となれば、検察官による起訴を回避することも十分に考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、盗撮行為の被害者の方に対する示談交渉の経験が豊富な弁護士が在籍しております。
盗撮行為をしてしまってお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。