建造物損壊罪で逮捕
建造物損壊罪で逮捕された場合の弁護活動等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説いたします。
事例
埼玉県さいたま市西区在住のAは、さいたま市西区内の会社に勤める会社員です。
Aは事件以前からさいたま市西区の自宅において、かつてからトラブルの絶えなかった隣人Vの家の玄関ドアを蹴るなどして破損しました。
Vからの通報を受けて臨場した、さいたま市西区を管轄する大宮西警察署の警察官は、Aを建造物損壊の疑いで逮捕しました。
Aの家族は、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~刑法第40章 毀棄及び隠匿の罪~
まず、本事例の行為から素朴に考えらえる犯罪として、器物損壊罪(俗に器物「毀損」などと言われることもありますが、法律上は器物「損壊」が正しいです)が想起されるのではないでしょうか。
刑法は、器物損壊罪について以下のように定めています。
(器物損壊等)
第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
ここで、注意すべきなのは、器物損壊罪は「前3条」つまり刑法258条、259条、260条に当たらない場合に成立する犯罪であるということです。
258条と259条は文書の毀棄に関する犯罪ですから、本件はこれに当たらないことは明らかです。
では、260条はどうでしょうか。
(建造物等損壊及び同致死傷)
第260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
本件では、AはVの家の玄関ドアを蹴るなどして、このドアを物理的に破損させるに至っています。
これによって、人を死傷させたりはしてないため、本件で問題となるのは260条の前段ということになります。
このような玄関ドアを壊してしまうような行為も、他人の「建造物」の損壊といえるのでしょうか。
この点に関し、判例は損壊された物と建造物との接合の程度や当該物の機能的重要性を考慮して、「建造物」という本条による処罰対象たる客体となるかどうかを判断するとしています。
住宅の玄関ドアは、住宅という建造物と強く接合されており、住宅の出入り口等として重要な機能を有していることから、「建造物」に含まれると解するのが通常でしょう。
したがって、Aの行為には建造物損壊罪(260条前段)が成立することになります。
なお、本罪は器物損壊罪等が親告罪であるのに対して、非親告罪(264条参照)であることにも注意が必要です。
~刑事弁護士による身体拘束解放(釈放)に向けての活動~
本件のように逮捕されてしまうと、多くの場合は勾留というより長期の身体拘束に移行します。
もっとも、裁判官による勾留の裁判に対しては、裁判所に対して準抗告を申し立てることができます。
これは、刑事訴訟法429条1項2号に基づく不服申し立てであり、一度された勾留を認める裁判を、その裁判官所属の裁判所に対して取り消すこと等を求めるものです(簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に不服を申し立てることになります)。
(被疑者)勾留の要件は、勾留の理由および勾留の必要性からなります(刑訴法207条・60条。87条1項も参照)。
そのため、準抗告では、これらの要件を認めた裁判官の裁判に対して、これらの要件が満たされないことを主張することになります。
これらの要件の中でも、最も争いになるのが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(60条1項2号)があるかどうかです。
勿論、この要件(俗に罪証隠滅のおそれと呼ばれます)が満たされるかどうかはケースバイケースですが、裁判官はこれを比較的容易に認める傾向があるため、勾留決定をした裁判官の判断の誤りを説得的に主張していくことで安易な身体拘束を防ぐことは、弁護士としての重要な弁護活動となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部は、建造物損壊罪なども含む刑事事件専門の法律事務所です。
埼玉県さいたま市西区にて、建造物損壊事件で逮捕された方のご家族は、24時間365日対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)にお問い合わせください。