【報道解説】自転車への放火で成立する罪と量刑 建造物等以外放火罪
自転車への放火事件によって成立する犯罪とその量刑等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【報道紹介】
埼玉県熊谷市の団地で、駐輪場の自転車などが燃える不審火が3件相次ぎました。
午前1時40分ごろ、熊谷市のUR賃貸団地で「火と煙が見える」と近くの住民から119番通報がありました。
警察によりますと、団地3棟の駐輪場あわせて5ヵ所で火事があり、約25分後に消し止められました。
この火事で、自転車や原付バイクなど16台や、集合住宅の網戸などが焼けました。
警察は何者かが火をつけた連続放火の可能性もあるとみて、周辺の防犯カメラなどの捜査を進めています。
(12月16日のABCニュース・関西ニュースの記事を参考に、場所等の事実を一部変更したフィクションです。)
【様々な放火罪】
刑法では、第9章で「放火及び失火の罪」として様々な放火の罪を規定しています。
例えば、第108条は、現に人が住居等に使用している建造物等を焼損した場合、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役を科すとしています(現住建造物等放火罪)。
また、第109条第1項は、現に人が住居等に使用されていない、または人がいない建造物等への放火について、2年以上の有期懲役を科すとしています(非現住建造物等放火)。
そのような放火罪の中で、住居や建造物、汽車、電車、艦船、炭坑以外のものは、「建造物等以外」と規定されており、放火によって建造物等以外を焼損し、よって公共の危険を生じさせた場合、1年以上10年以下の懲役を科すとしています(第110条第1項、建造物等以外放火)。
なお、建造物等以外の対象物が、自己の所有する物である場合、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金を科すとして、法定刑が下げられています(同条第2項)。
上記の刑事事例では、「放火」して、自転車という建造物以外の物を「焼損」しており、また、賃貸団地の駐輪場にある自転車に対する放火によって団地建物への延焼の危険があったとして、「公共の危険」を生じさせる可能性があると判断される可能性があります。
そのため、この刑事事件例の場合では、自転車に対して放火した被疑者に対して、建造物等以外放火罪が成立する可能性が高く、警察はその線で捜査を進めるものと思われます。
【物を壊す罪について(器物損壊罪)】
なお、刑法第261条の器物損壊罪によれば、他人の物を損壊等した場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金・科料を科すとしています。
自転車に対する放火は、結果として自転車を損壊しているため、器物損壊罪が成立するようにも思えますが、器物損壊行為は放火行為の一内容なので、建造物等以外放火罪が成立する場合、別個に器物損壊罪は成立しないと考えられています。
【様々な放火罪の量刑】
建造物等以外放火罪が成立した事案として参考になる量刑事例として、
・前科一犯の男が集積されていたゴミ袋に点火し、壁面に貼り付けられたポスター用シールに燃え移らせ焼損させて、懲役2年6ヶ月保護観察付執行猶予4年が科された事例(平成27年2月判決)
・アパート内での放火により衣類等を焼損し、玄関ドアを損壊させて、懲役2年執行猶予4年が科された事例(平成27年3月判決)
放火罪は上記のように、比較的罪の重い犯罪です。
しかし、事案によるところはあるものの、少なくとも建造物等以外放火罪については、例えば被害者に対する謝罪や被害弁償等によって示談が成立するなどの被疑者・被告人の情状が認められた場合には、仮に罪が成立した場合であっても、実刑判決を回避し、執行猶予判決を得る等のより軽い刑を目指すことは十分に可能です。
一般に、被害者は加害者(被疑者・被告人)に対して、怒りや恐怖を抱いているのが通常であり、当事者同士で示談交渉をすることは通常は困難です。
他方、刑事事件の示談交渉が経験豊富な弁護士であれば、被害者に対して様々な条件を提示して示談を成立する可能性を高めることが期待できます。
そのため、このような法定刑の重い放火罪の刑事弁護については、刑事事件に精通した弁護士に任せるのが安心です。
【放火罪のお悩みは弁護士に相談】
今回は、自転車への放火の事案について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に精通した弁護士が多数在籍する法律事務所です。
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