埼玉県桶川市で自殺教唆の少年事件
少年グループ内におけるイジメや同調圧力等により人を自殺に追いやってしまった場合の法的責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【事件例】
埼玉県桶川市在住の高校生Aさん(17歳)は、高校で不良少年のグループに属しており、負けたグループの一人が荒川の橋から川へ飛び込むという約束のもと、対立するグループとのバイク運転の勝負を行い、勝負に負けた対立グループに所属する16歳の少年Vに対して「早く飛び込め」等と集団で脅し掛け、Vを荒川へ飛び込ませました。
Vは荒川へ飛び込んだものの、その後水面へ浮上してくることはなく、AさんらグループはVが死亡してしまったのではないかと恐くなり、その場から逃げ出しました。
その後、埼玉県警上尾警察署や消防団がその現場を捜索したところ、Vが心配停止の状態で川底に沈んでいるのが発見され、病院に搬送されたものの、死亡が確認されました。
Aさんら事件に関わった少年らは、上尾警察署から任意の事情聴取を求められ、Vが死亡事故に至った経緯について自殺教唆の疑いがあるとして、今後も警察に呼び出すと言いつけられました。
(フィクションです。)
上記刑事事件例は、神奈川県川崎市の多摩川で今年12月19日夜、男子高校生がラップのスキルを競い合う「ラップバトル」の罰ゲームとして敗者を川に飛び込み死亡させてしまった事件をモデルにしています。
12月19日午後9時40分ごろ、川崎市幸区の多摩川大橋から高校1年の少年(16歳)が川に飛び込み、警察や消防が約30人態勢で付近を捜索したところ、およそ1時間半後に心肺停止の状態で川底に沈んでいるのが見つかり、病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。
当時、死亡した少年は中学時代の友人5人と河川敷でラップのスキルを競い合う「ラップバトル」の勝負をしていて、負けた人が罰として川に飛び込むことになっていたとのことですが、警察は、友人らから当時のくわしい状況を聞いています。
【危険な集団心理と死亡事故】
グループのゲームなどにおいて、場を盛り上げるために罰ゲーム等を設定することは往々にあることで、時にグループの興奮が高まると、罰ゲームの内容が過激になったり、反社会的な方向へ向かうこともしばしば見受けられます。
また、血気盛んな若者に集団心理が働くと、思いがけずに過剰に暴力的になり、時に死亡事故につながってしまうことがあります。
刑法第202条によれば、人を教唆しもしくは幇助して自殺させ、または人をその嘱託を受けもしくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役または禁錮が科せられます。
上記条文について、人を教唆して自殺させることを自殺教唆罪、人の自殺を幇助させることを自殺幇助罪と言い、後段を嘱託殺人または承諾殺人と言います(あわせて同意殺人罪と言うこともあります)。
自殺の「教唆」の程度については参考になる判例があり、連日のごとく暴行・脅迫を繰り返し、執拗に肉体的・精神的圧迫を加えて自殺を決意させ、実行させた場合において、暴行・脅迫が意思の自由を失わしめる程度のものでないときは、自殺教唆となると判示されています。
つまり、たとえ自殺者に自由意思が残っていた場合でも、その自殺の決意にいたる過程において、悪質な暴行・脅迫等による強制力が働いた場合、自殺教唆罪が成立することを示しており、上記の川崎市の死亡事故においても自殺教唆罪が成立する余地は十分にあると思われます。
少年事件は、原則として、検察官から家庭裁判所に送致されるのが通常であるところ、例外として、16歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件については、家庭裁判所は原則として事件を検察庁も逆送し、成人と同じく一般の刑事手続きを行うことになると定められています(少年法第20条第2項前段)。
ただし、この場合でも、家庭裁判所の調査の結果、犯行の動機および態様、犯行後の情況、少年の性格・年齢・行状・環境・その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認める場合には、検察庁への逆送をしなくてもよいと例外も規定されています(少年法第20条第2項後段)。
死亡事故のように、少年らが意図した以上に甚大な被害が生じてしまった少年事件においては、少年らは精神的なショックを受けた結果、自分の気持ちや記憶を正直かつ適切に表現することが難しいことも多く、少年事件の付添人活動の経験豊富な弁護士によるサポートを受け、適切な処遇へ導いていくことが非常に重要となります。
埼玉県桶川市の自殺教唆の少年事件やその疑いのある死亡事故等でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所への初回無料の法律相談または初回接見サービスをご検討ください。