【事例解説】詐欺未遂で逮捕
埼玉県熊谷市で詐欺未遂の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【事例紹介】
「Aさんは、日払いのアルバイトをしようと思いSNSで検索したところ、書類の配達のバイトを見つけたので、応募して採用されました。
Aさんは、早速、電話で埼玉県熊谷市にある家に行って偽名を名乗って書類を受け取り、受け取った書類を所定の場所にいる担当者に渡すように指示されました。
Aさんは、この指示に従って、埼玉県熊谷市にある家に向かい、呼び鈴を押して偽名を名乗ったところ、家から出てきた埼玉県警熊谷署の警察官に詐欺未遂の現行犯で逮捕されました。
(この事例はフィクションです)
【気づかない内に特殊詐欺に関わってしまうことがある!】
事例のAさんのように書類の配送・配達のアルバイトだと思ってバイトを始めたころ、書類の受け取りが特殊詐欺の一部であったため、書類を受け取りに行ったら突然警察に逮捕されたという事件が珍しくありません。
事例のようなケースでは、概ね以下のような形で特殊詐欺が行われている場合が多いです。
・Aさんが書類を受け取る前に、別の人が特殊詐欺のターゲットにした高齢の被害者の方に、金融機関や公的機関の職員であると名乗って電話を架けている。
・電話では「お使いの口座が犯罪に使われている」や「還付金を受け取ることができる」などのウソの電話をして、被害者の方に暗証番号のメモとキャッシュカードや現金などの金目の物を封筒に入れさせて準備をさせる。
・金目の物が入った封筒を受け取り役のAさんが受け取る。
・封筒を受け取ったAさんが、別の場所に待機している大元の特殊詐欺の犯行グループの人に手渡す。
このような計画の元で行われる特殊詐欺では、被害者の方から書類を受け取る場面が、被害者の方と実際に対面することもあって、警察に逮捕されるリスクが一番高い場面であるといえます。
そのため、特殊詐欺を計画している大元の犯行グループは、書類の受け取り役をグループとは全く関係ないSNSでアルバイトとして募集してきた人物に担わせて、仮に書類の受け取り役が警察に逮捕されても、警察が大元の犯行グループまでたどり着かないように対策を立てています。
こうしたことに気が付かず、簡単にお金を稼ぐことができるアルバイトだと思って書類の受け取りをしてしまうと、詐欺の疑いで警察に逮捕されてしまう場合があります。
【書類を受け取っただけだから罪は軽い?】
刑法60条には「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」という規定があります。
これは、2人以上の人が共同して犯罪を実行した人を共同正犯として、他の人が行った行為についても、自分が行ったものとしてその責任を負うということを意味しています。
そのため、詐欺罪の共同正犯になってしまうと、たとえ書類の受け取りしかやっていなくても、他の人が行った嘘の電話をかける行為や最終的に金目の物を受け取る行為といった行為についても自分がやったものとして責任を負うことになります。
書類を受け取ったことで詐欺罪の共同正犯が成立するかは、実際にそのときにどういった認識があったかといった事情も非常に重要になりますので、書類の受け取り役が必ずしも詐欺罪の共同正犯になるという訳ではありません。
ただ、自宅訪問時に偽名を名乗るよう指示されたりと「これってもしかして詐欺じゃないのかな」と思うような事情があれば、詐欺罪の共同正犯が認められやすくなってしまうでしょう。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役刑となっていますので、詐欺罪の共同正犯になると、書類の受け取りしかしていなくても、10年以下の懲役刑が科される場合があります。
なお、事例のAさんは書類を受け取る前に〇〇署の警察官に現行犯逮捕されていますから、実際に書類を受け取ってはいません。
そのため、Aさんには詐欺罪の既遂の共同正犯が成立する可能性はなく、詐欺罪の未遂の共同正犯が成立する可能性があるのみですが、詐欺罪の未遂といっても、法定刑は詐欺罪の既遂の場合と同じで10年以下の懲役刑となっています(ただし、刑法43条によって刑を減軽することができます)。
【ご家族が特殊詐欺で警察に捕まってお困りの方は】
ご家族の中に、特殊詐欺に関わってしまったことで警察に詐欺の疑いで逮捕されてしまった方がいる場合には、弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
初回接見によって、弁護士が警察の留置場で拘束されているご家族の方から直接事件についてお話を聞くことができますので、事件の見通しや今後の手続の流れ、弁護士が取ることができる刑事弁護活動などについて知ることができるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
埼玉県熊谷市でご家族が特殊詐欺で警察に捕まってお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部まで一度ご相談ください。