【報道解説】眠っている女性への痴漢で、準強制わいせつ・窃盗・わいせつ目的略取未遂で逮捕

【報道解説】

眠っている女性への痴漢で、準強制わいせつ・窃盗・わいせつ目的略取未遂で逮捕 電車内で寝ている女性の体を触った上、女性のリュックを盗んで女性を抱きかかえて連れ去ろうとしたとして準強制わいせつ、窃盗、わいせつ目的略取未遂の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「令和4年12月1日、埼玉県警熊谷警察署は1日、準強制わいせつと窃盗、わいせつ目的略取未遂の疑いで熊谷市の会社員の男(39)を逮捕したと発表した。 逮捕容疑は5月19日午後11時25分~55分ごろ、JR高崎線の車内で、座席で寝ていた女性会社員(36)の隣に座り体を触った疑い。 男は、現金数万円などが入った女性のリュックサックを盗み、わいせつ目的で抱きかかえて連れ去ろうとした疑いも持たれている。 同署によると、『記憶にありません』と容疑を否認している。 女性が助けを求めた店の従業員が110番通報した。 駅構内の防犯カメラ映像などの捜査で浮上した。」

(令和4年12月2日に千葉日報オンラインで配信された報道より、犯行場所等の事実を一部改変して引用)

【準強制わいせつ罪はどのような場合に成立するのか】

電車内で眠っている女性や酔いつぶれている女性に「わいせつな行為」をすると、刑法178条1項の準強制わいせつ罪が成立することになります。 法律上、どのような行為をすれば「わいせつな行為」に当たるということは規定されていませんが、女性の乳房や陰部を直接触るといった行為や、女性の唇にキスをする行為、服の上から女性の胸やおしりと言った性的部位をもてあそぶ行為は「わいせつな行為」に当たると考えられています。 このような準強制わいせつ罪を犯した場合、6か月以上10年以下の懲役刑が科される可能性があります。

【窃盗をするとどのような刑罰になるのか】

電車で寝ている女性に痴漢行為をした際に、女性が寝ていることをいいことに女性の現金を盗んだ場合は、別途刑法235条の窃盗罪が成立することになります。 窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金刑となっています。

【わいせつ目的略取未遂とは】

今回取り上げた報道では、逮捕された男性は準強制わいせつ罪と窃盗罪に加えて、わいせつ目的略取未遂の疑いで逮捕されています。 犯罪を行おうとその実行に着手したものの、犯罪を最後まで行うことができなかった場合を「未遂」といい、犯罪を最後までやり遂げた場合を「既遂」と言います。 犯罪を最後までやり遂げることができなかった未遂の場合も刑事罰の対象になりますが、全ての犯罪の未遂が処罰されているわけではなく、「この犯罪の未遂は処罰します」という趣旨の規定が置かれている犯罪のみが処罰の対象となっています(刑法44条)。

刑法225条に規定されているわいせつ目的略取罪は、わいせつ目的で、暴行・脅迫といった強制的な手段を用いるなどして被害者の意思を抑制して、被害者を自分や第三者が支配する環境に置いた場合に成立しますので、この時点でわいせつ目的略取罪が既遂となります。 このわいせつ目的略取罪については刑法228条が未遂犯処罰規定となっていますので、わいせつ目的略取罪の未遂は処罰の対象となります。

取り上げた報道では、電車内で体を触った女性を抱きかかえて連れ去ろうとした疑いがあるとのことですので、おそらく警察は、逮捕した男性が被害者に対して更なるわいせつ行為をしようと抱きかかえて移動したものの、家や近くのトイレなど自分が支配する領域まで被害者を移動させることができなかったと判断したため、わいせつ目的略取罪の未遂の疑いでも逮捕したと思われます。 ちなみに、わいせつ目的略取未遂の場合の法定刑は、わいせつ目的略取罪の場合と同じで1年以上10年以下の懲役刑となっていますが、刑法43条によって未遂の場合はその刑を減軽することができるとされています。

【ご家族がある日突然警察に逮捕されたら】

今回取り上げた報道は、今年の5月半ばの事件について、それから半年以上たった12月1日に逮捕したというものです。 このように事件が起きてからしばらく経ってから、ある日突然警察が自宅を訪れて逮捕すると言う場合はさほど珍しいことではありません。 逮捕されたご本人は自分がどういう事になっているか分からないまま、警察から半年以上前の出来事について取り調べを受けることになりますが、こうした状況の中で半年以上前の出来事について詳しく話すということは非常に困難なことだろうと思います。 しかし、記憶があやふやなことを正直に「よく覚えていない」と取調べの警察に話しても警察から「本当は覚えているんだろう」「反省していない」などど自分が犯人であることと決めつけられてしまい、最終的にはそうした警察の対応に精神的に疲れてしまい、やってもいないことをやったと虚偽の自白をしてしまうおそれがあります。

こうした冤罪事件を防止するためには、警察がご家族を逮捕してからすぐにでも弁護士が事件に介入する必要があります。 弁護士が逮捕直後に事件に介入することで、逮捕直後から行われる取調べの対応についてアドバイスをすることができます。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。 ある日突然ご家族が電車内での痴漢の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

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