【報道解説】刑法改正前の強制性交等罪と改正後の不同意性交等罪を逮捕事案で解説
令和5年7月13日の刑法改定前後における、旧強制性交等罪と改定後の不同意性交等罪事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【報道紹介】
法改正で名称が変わった「不同意性交」の容疑で、埼玉県戸田市に住む22歳の男が逮捕されました。
令和5年7月16日の深夜、容疑者は同市内に住む22歳の女性の自宅で女性に暴行を加え、同意なく性行為をした不同意性交の疑いが持たれています。
埼玉県警蕨警察署によれば、容疑者は「そんなことしていない」と容疑を否認している模様です。
(令和5年7月19日に配信された「NEWS ONE」の事実の一部を改変したフィクションです。)
【改定前の強制性交等罪】
令和5年7月13日の刑法改定前においては、強制性交等罪は以下のとおり規定されていました。
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔こう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
つまり、13歳以上の人を被害者として強制性交等罪が成立するためには、「暴行」か「脅迫」の上での性交等が構成要件となっており、13歳未満であれば「暴行」か「脅迫」がなくても、性交等の行為のみで処罰するという規定です。
ただ、強制性交等罪における「暴行」や「脅迫」は、「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。」や「加害者と被害者の年令、性別、素行、経歴等や犯行がなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである。」等と判例で示されており、実務上柔軟に解釈・運用されてきた経緯がありました。
【不同意性交等罪とは】
令和5年7月13日に施行された刑法改正により、「強制性交等罪」や「準強制性交等罪」が、「不同意性交等罪」へと罪名が変わり、犯罪が成立する要件などが見直されました。
(本ブログでは「不同意わいせつ罪」については解説しません。)
不同意性交等罪では、以下に列挙する8項目に該当する行為により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず処罰されることになります(刑法第177条第1項)。
・暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
・心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
・アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
・同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
・虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
・経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
今回の刑法改正は、改正前の強制性交等罪で運用されていた柔軟な総合的判断を見直し、より具体的な構成要件を8項目提示することで処罰範囲の明確化を図るべく改定されたものと思われます。
なお、不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑となっています。
【不同意性交等罪の弁護活動】
不同意性交等事件を起こして、逮捕や警察取調べを受けた場合には、まずは弁護士に法律相談をして、事件当日の経緯などの事情を整理することで、警察取調べの供述対応を、弁護士とともに検討することが重要となります。
また、被害者やその保護者との示談交渉を、弁護士が仲介して進めることで、被害者側の許しが得られるような示談が成立すれば、刑事処罰の軽減や、不起訴処分の獲得の可能性を高めることが期待されます。
まずは、不同意性交等事件が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕当日に、逮捕されている留置場に弁護士を派遣する、弁護士初回接見サービスのご依頼も承っております。
埼玉県の不同意性交等事件でお困りの方は、性犯罪等の刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件に経験豊富な弁護士にご相談ください。