【報道解説】刑法改正の性的姿態撮影等処罰法の逮捕事案

【報道解説】刑法改正の性的姿態撮影等処罰法の逮捕事案

令和5年7月13日の刑法改定前後における、性的姿態撮影等処罰法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。

【報道紹介】

埼玉県上尾市内の宿泊施設で、20代女性の性的な姿を盗撮したとして埼玉県に住む会社員の男性(39)が「性的姿態撮影等処罰法」違反の疑いで逮捕されました。
逮捕容疑は、7月25日午後9時半頃、小型カメラを使って滞在していた上尾市内のホテルの部屋を訪れた女性(20代)の性的な姿を盗撮したというものです。
警察によると、小型カメラは一見するとカメラとわからない状態で室内に置かれていたが、不審に思った女性が知人に連絡し、駆けつけた知人が男を問い詰めたところ盗撮の事実を認めたため通報したということです。
(令和5年7月26日に配信された「Yahooニュース テレビ静岡」の記事の事実の一部を改変したフィクションです。)

【性的姿態撮影等処罰法違反の刑事処罰とは】

令和5年7月13日、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(いわゆる「性的姿態撮影等処罰法」)が施行されました。

これまでは、違法な盗撮行為は、各都道府県の制定する「迷惑防止条例」により、刑事処罰の対象とされてきました。
今後は、違法な盗撮行為が、性的姿態撮影等処罰法違反の「性的姿態等撮影罪」として、刑事処罰の対象となります。

・性的姿態撮影等処罰法 第2条(性的姿態等撮影)要約
正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

【迷惑行為防止条例との比較】

例えば埼玉県迷惑行為防止条例違反では、盗撮行為は要約すると次のとおり処罰が定められていました。

正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させたり、不安を覚えさせるような行為であつて、(略)「衣服等」で覆われている下着又は身体を「写真機等」を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置することをしてはならない(第2条の2第1項第1号)。

これに違反した場合、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されることになります。

都道府県の迷惑行為防止条例違反では、盗撮行為が行われる場所の要件として、「公共の場所又は公共の乗物」等が規定されており、公共の場所ではないが人が裸でいることが想定される場所等での盗撮行為について処罰の可否が問題となる例がありましたが、性的姿態等撮影罪ではこの盗撮場所を広く定義することで処罰範囲を不当に狭くしないよう配慮が図られています。

また、「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」と同じく、被害者の同意が無いであろう場面を類型化して処罰範囲に加えることで、性犯罪被害者の救済を図る意図も伺うことができます。

また、法定刑が引き上げられたことで、今後盗撮行為を厳正に処罰されることになります。

【性的姿態等撮影罪の弁護活動】

性的姿態等撮影罪の疑いで逮捕や警察取調べを受けた場合には、まずは弁護士に法律相談をして、事件当日の経緯などの事情を整理することで、警察取調べの供述対応を、弁護士とともに検討することが重要となります。
また、被害者やその保護者との示談交渉を、弁護士が仲介して進めることで、被害者側の許しが得られるような示談が成立すれば、刑事処罰の軽減や、不起訴処分の獲得の可能性を高めることが期待されます。

まずは、性的姿態等撮影罪が発生してから、できるだけ早期の段階で、刑事事件に強い弁護士に法律相談することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕当日に、逮捕されている留置場に弁護士を派遣する、弁護士初回接見サービスのご依頼も承っております。

埼玉県の性的姿態等撮影罪の盗撮事件でお困りの方は、性犯罪等の刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件に経験豊富な弁護士にご相談ください。

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