【事例解説】埼玉県朝霞市のチケット不正転売禁止法違反事件
埼玉県朝霞市のチケット不正転売禁止法違反事件ついて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【事例紹介】
「埼玉県朝霞市に住む会社員Aさんは小遣い稼ぎのために、自身で正式に購入したプロ野球の試合のチケットを定価よりも高い価格で転売するという行為を繰り返していました。
ある日の早朝、Aさんが仕事に行く前に、自宅に埼玉県警朝霞警察署の警察官が訪れて、Aさんは、チケット不正転売禁止法違反の疑いで朝霞警察署の警察官に逮捕されました。」
(この事例はフィクションです)
【チケット不正転売禁止法とは?】
事例のAさんは、チケット不正転売禁止法違反の疑いで逮捕されています。
プロ野球のチケットを自分で正式に購入した場合、自分が買ったチケットは自分の物なのだから、自分のチケットを転売しようが何しようが自由なのではないかと思われる方がいるかもしれません。
しかし、プロ野球や演劇、コンサートといったチケットの転売を無制限に認めてしまうと、いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる人たちに、チケットが買い占められて高額転売が横行する可能性があります。
しかし、このような事態は興行主や純粋にスポーツの試合観戦やコンサート鑑賞を楽しみたい一般消費者にとって望ましい事態とはいえません。
というのも、興行主の側からすると、転売ヤーが高額転売しても興行主の利益には繋がりませんし、一般消費者の側からすると、高額転売がなされることによってチケットが入手しづらい状況になるからです。
そこで、このような事態に対応するためにチケット不正転売禁止法という法律(正式な名称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」と言います)が成立して、2019年から施行されています。
【「特定興行入場券の不正転売」とは?】
チケット不正転売禁止法3条では、「何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない。」と規定し、この規定に違反した場合は、チケット不正転売禁止法9条1項によって、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金が科されるか、又はこの懲役刑と罰金刑が併せて科される可能性があります。
このように刑事罰の対象になる「特定興行入場券の不正転売」については、チケット不正転売禁止法3条4項が、「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」と定義しています。
難しく規定されていますが、要するに、プロ野球やコンサートのチケットのような「特定興行入場券」を興行主の事前の同意なく、反復継続して、定価を超える価格で転売する行為を刑事罰の対象にしているということです。
【「特定興行入場券」とは?】
先程から、「特定興行入場券」という言葉が度々登場していますが、チケット不正転売禁止法上においては、「特定興行入場券」を、芸術や芸能、スポーツイベント(まとめて「興行」と言います)などのチケットで、不特定又は多数の者に販売され、次の①~③の全てに該当するチケットととしています。
①チケットの販売に際し、興行の主催者の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨が券面(電子チケットの場合は映像面)に記載されていること(チケット不正転売禁止法2条3項1号参照)。
②興行が行われる日時・場所・入場資格者か座席が指定されたチケットであること(チケット不正転売禁止法2条3項2号参照)。
③入場資格者が指定されたチケットの場合は(ⅰ)の条件を、座席が指定されたチケットの場合は(ⅱ)の条件を満たす必要があります。
(ⅰ)入場資格者が指定されたチケットの場合は、入場資格者の氏名と電話番号やメールアドレスと言った連絡先を確認する措置が講じられており、その旨がチケットの券面に記載されていること(チケット不正転売禁止法2条3号イ参照)。
(ⅱ)座席が指定されたチケットの場合は、購入者の氏名と連絡先を確認する措置が講じられており、その旨がチケットの券面に記載されていること(チケット不正転売禁止法2条3号ロ参照)。
プロ野球などのプロスポーツの試合や有名なアーティストのコンサートなどのチケットの多くは、上記の①〜③の全てを満たして「特定興行入場券」に該当することが多いと考えられます。
【チケット不正転売禁止法違反の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は】
これまで、チケット不正転売禁止法という法律について簡単に説明しました。
施行からまだ数年しかたっていない法律ですので、本当にチケット不正転売禁止法違反で逮捕されたり、前科が付くのかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実際にチケット不正転売禁止法違反で逮捕・有罪となった事例もあります。
例えば、令和2年8月27日に大阪地方裁判所では、チケット不正転売禁止法と有印私文書偽造・同行使の成立を認めて、懲役1年6月(執行猶予3年)、罰金30万円の有罪判決が出されています。
また、今年の4月にも野球の世界大会のチケットを繰り返し高額転売したとして、チケット不正転売禁止法違反の疑いで警察に逮捕された事例があります。
このように実際にチケット不正転売禁止法違反違反で検挙・有罪とされた事例がありますでので、チケット不正転売禁止法違反違反の疑いで警察の捜査を受けられている方は、いち早く弁護士に相談して、今後の対応などについてアドバイスをもらうことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
埼玉県朝霞市で、チケット不正転売禁止法違反の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部まで一度ご相談ください。