・執行猶予判決とは
「執行猶予判決」とは懲役刑や禁錮刑を言い渡されても,一定の期間は刑務所へ入らなくてもよい判決のことです。
執行猶予付きの判決がつけば,有罪判決の場合でも刑の執行が一定期間猶予されます。
ただ,執行猶予付きの判決であっても,有罪判決であることには違いありませんので,残念ながら前科は残ってしまいます。
しかし,通常の生活をすることができる点で大きなメリットがあります。
・執行猶予判決の要件
一般の執行猶予の要件は,
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者,又は,その執行を受け終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことのない者が
- 3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは
- 情状によって裁判確定の日から1年以上5年以下の期間内,その執行を猶予するもの
と規定されています。
また,再度の執行猶予として,前に禁錮以上の刑に処せられたがその執行を猶予された者が,1年以下の懲役または禁錮の言渡しを受け,上場が特に酌量すべき場合にも,その刑を猶予することが認められています。
なお,一般の執行猶予は任意的に,再度の執行猶予では必要的に保護観察に付せられます。
・保護観察とは
保護観察中に,定められた事柄(遵守事項)を遵守するよう対象者を指導・監督し、あるいは、本来対象者自身が自ら更生のために努力しなければならない、という自助の責任を認めて補導・援護を行うことで、対象者の改善・更生を図るという制度です。
・執行猶予付き判決を得るためには
執行猶予付き判決を得るために,まずは犯した犯罪の内容や犯罪の悪質性が重要であることはもちろんですが,被害者がいる犯罪の場合,「示談」が成立していることのインパクトは大きいといえます。
また,社会内で更生するための環境が整っていることを示すために,ご家族に協力していただいたり,本人の更生の意思を具体的に示したりすることが執行猶予を勝ち取るうえで大切なことです。
・執行猶予が取消される場合
執行猶予がついて社会復帰したとしても,新たに罪を犯したり遵守事項を破ったりすれば執行猶予が取消されたり,あるいは取消となる可能性があります。
つまり,執行猶予判決を得て社会に復帰した後は,健全な生活が要求されます。
健全な生活が要求されるとはいうものの,基本的には以前と変わらない社会生活を送ることが可能です。
捜査機関に一日中見張られているというようなこともありません。
ただし,以下に示すように,執行猶予が取り消される場合があります。
二度と罪を侵さないようにするのはもちろんのこと,交通事故を起こしてしまった場合にも執行猶予が取り消される可能性があります。
(1)必ず執行猶予が取り消される場合
- 執行猶予期間内に更に罪を犯して禁錮以上の実刑の言渡しがあったとき
- 執行猶予言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の実刑の言渡しがあったとき
- 執行猶予言渡し前に,他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき
(ただし,発覚した罪についての刑の執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者を除く。)
(2)執行猶予が取り消される可能性がある場合
- 執行猶予期間内に罰金に処さられたとき
- 保護観察付きの執行猶予期間中に保護観察に付された者が,その間守るべき事項を守らず,その情状が重いとき
- 執行猶予言い渡し前に,他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を猶予されたことが発覚したとき
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