埼玉県蕨市で保険詐欺目的の放火
埼玉県蕨市所在のメーカー経営者Aさんは、会社の資金繰りに困り、すぐにでも現金を入手できなければ会社が倒産になるとの危機感から、会社の事務所に放火して、その火災保険の保険金をもって資金を調達することを考えました。
そこで、Aさんは、会社の建物内に存在する備品等も火災保険で補償されるように補償内容を改めた上で、部下のBさんに命じて、深夜の無人となって事務所に放火をさせ、その結果、事務所は全焼するに至りました。
埼玉県警蕨警察署が火災の状況を調べたところ、火災現場から、火の勢いを強めるための油分が検出されたこと、さらには、犯行推定時刻に不信な人物が事務所を出入りしていたことが防犯カメラから割り出され、捜査を進めた結果、事情聴取を求めたBさんが放火を認めたため、Bさんを非現住建造物放火罪の疑いで逮捕しました。
さらに調べを進めていくと、BさんはAさんから事務所を放火するよう指示されていたことが分かり、警察は、Bさんの放火にあたって、Aさんとの事前の共謀があったとして、Aさんを非現住建造物放火罪の共謀共同正犯として逮捕しました。
警察は、放火の後に保険会社に対する保険金請求が行われていたかについて捜査を進めています。
(フィクションです。)
火災保険は、住宅や施設という単価の非常に高い保険目的に対して、その損失に対する保険金を支払うものであるゆえに、多額の保険金を目的とした意図的な火災の発生、放火、そしてそれを隠した詐欺的な保険金請求の対象になりやすい傾向が強いです。
まず、詐欺的な保険金請求のために、自分の家または会社所有の事務所等を故意に放火した場合、現に人が住居に使用していたり、または現に人がいる建造物等を放火した場合には、死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役という非常に重い罪が科されます(現住建造物等放火罪。刑法第108条)。
ただし、保険金目的で放火をする人間は、このような極めて重い法定刑の刑事責任リスクは避けるのが通常であり、現に人が住居にしようしていない建物を放火するのが一般的です。
非現住建造物等に対する放火は、他人所有の建造物等に対しては2年以上の有期懲役が科され、自己所有の建造物等に対しては、6月以上7年以下の懲役が科されると罪の軽重を区別しており、さらに自己所有の建造物等に対する放火において、公共の危険が生じなかった場合には罰しないとされています(非現住建造物等放火罪。刑法第109条。)
もっとも、公共の危険の発生は厳格に解されており、従来の判例からすれば、住宅地や商業地等、少しでも引火延焼のおそれがある場合には、公共の危険が生じなかったと判断される可能性は極めて低いと思われます。
さらに、放火の後、当該火災を保険事故として保険会社に保険金を請求することによって、詐欺罪または詐欺未遂罪という別の犯罪が成立することもあり得ます。
もちろん、保険会社はそのような詐欺的な保険金請求に対して、様々な経験を積み重ねており、損害調査のプロによる厳しいチェックで保険金詐欺を事前に防止するとともに、保険金詐欺であったことが事後的に判明した場合には、極めて厳しい姿勢で詐欺罪や詐欺未遂罪の刑事責任を追及することが多いとされています。
よって、保険会社は、保険金詐欺に対しては、被害届または刑事告訴を躊躇なく行うことが多く、被疑者から保険会社に示談を申し出たとしても、示談を受けてくれる可能性は極めて低いと言えます。
保険金詐欺の刑事事件は、逮捕リスクが非常に高いため、身柄が拘束された初期の段階で刑事事件弁護士に接見を依頼し、警察の取調べに対して不適切な供述をして後の刑事手続に不利な影響を及ぼさないよう、手段を講じていくことが大切です。
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(埼玉県警蕨警察署への初回接見費用:37,300円)