埼玉県所沢市で予約の無断キャンセルで業務妨害
宿泊施設や飲食店に対して予約の無断キャンセルを繰り返すことにより業務を妨害することによる犯罪の事例と、その刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
<事件例>
埼玉県所沢市在住の無職Aさんは、飲食店の予約サイトを利用して提携飲食店に予約を入れれば大手インターネット通販サイトで使用できるポイントを付与するというサービスを悪用し、埼玉県内の飲食店に架空の名義で多人数の食事の予約をしては無断キャンセルすることを繰り返していたため、被害に遭った店舗の被害届により警察の捜査が開始され、Aさんは埼玉県警所沢警察署によって、電磁的記録不正作出罪および同供用罪、そして偽計業務妨害罪の疑いで逮捕され、勾留が決定しました。
(フィクションです)
上記刑事事件例は、宿泊予約サイトで予約したホテルを無断キャンセルし業務を妨害したなどとして、京都府警に電磁的記録不正作出罪および同供用罪と偽計業務妨害罪の疑いで逮捕された母子2名の被疑者が、今年2月12日、宿泊予約サイトを通じて予約した滋賀県、京都府、奈良県の3施設分について、昨年11月に無断キャンセルして業務を妨害するなどした事実が浮上したため、再逮捕された事案をモデルにしています。
上記2名の被疑者は、1年間で約3200回の無断キャンセルを繰り返し、宿泊施設に1億1500万円の被害を与えていたことが判明し、警察はまだ余罪があるものと見て引き続き捜査を進めています。
【無断キャンセルによる業務妨害の罪】
刑法第233条によれば、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いて、人の信用を毀損したり、または人の業務を妨害した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
この条文の「偽計を用いて人の業務を妨害」する行為を特に偽計業務妨害罪と呼び、妨害行為の結果、実際に業務が妨害されたことは必要ではなく、業務を妨害する可能性がある行為であれば足りると解されています(判例)。
上記刑事事件例に類似した偽計業務妨害罪が成立した実際の刑事事件例として、令和元年7月23日、同業他社の競合店に虚偽の予約を繰り返したとして、警視庁立川警察署が東京都立川市のマッサージ経営会社役員の男性を偽計業務妨害罪の疑いで東京地検立川支部に書類送検した事案があります。
警察によると、被疑者は2017年9月、同業他社の運営するインターネットの予約サイトを通じ、マッサージ店に偽名で3件の予約を入れ、そのまま来店せずに同店の業務を妨害した疑いが持たれています。
予約サイトの運営会社が、立川市や周辺の加盟店で同様の無断キャンセルが1000件以上相次いでいると警察に相談し、警察が発信元のIPアドレスなどから特定の者が虚偽の予約と無断キャンセルを繰り返していることを特定したことで刑事事件化に至ったようです。
このような偽計業務妨害罪の刑事事件では、被害総額が高額になることが予想され、被害者に対する被害弁償が事実上不可能になる可能性も予想されますし、そもそも悪質な犯行態様であることから、被害額に関わらず、被害者が被疑者に対して厳罰を求め、示談に応じないことも十分考えられます。
このような場合、真摯な謝罪を繰り返し、被害弁償を受け取って頂く努力を続けることと平行して、場合によっては、贖罪寄付といった内省状況を示す情状をアピールしていくことも重要となります。
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