埼玉県さいたま市で社会的立場を利用したセクハラで準強制わいせつ罪
雇用主や会社の上司など、社会的立場を利用したセクハラによって成立しうる準強制わいせつ罪のケースやその刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【事例】
埼玉県さいたま市所在のタレント事務所の社長Aさんは、スカウトしてタレント契約を結んだばかりの新人の女性らに対し、「写真撮影の現場に慣れなければならない」や「身体の骨格や肌のケアの指導をする」等の名目で、女性らの意図に反して、女性らの裸の写真を撮影したり、女性らの裸の身体に触る等のわいせつ行為を行ったとして、女性らの被害相談に基づき、埼玉県警浦和西警察署により準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。
警察の調べに対し、Aさんは「あくまでタレント指導の一環として行った。同意はあった」と被疑事実を否認しています。
(※フィクションです。)
上記刑事事件例は、今年12月5日、女性の裸の写真を撮影したなどとして、警視庁捜査1課が、アニメ制作会社「ガイナックス」(東京都武蔵野市)の男性社長を準強制わいせつ罪の疑いで逮捕した事案をモデルにしています。
逮捕容疑は、今年2月6から23日の間に、自宅マンションの一室で、10代後半の女性に4回にわたり「芸能人として写真を撮られるための訓練」と信じ込ませて上半身の裸の写真を撮影したり、「足がむくんでいるからマッサージした方が良い」と言って体を触ったりしたなどのわいせつ行為を行ったというものです。
警察の調べに対し、被疑者は「お願いされて写真を撮った。事実は違う」と被疑事実を否認している模様です。
【準強制わいせつ罪と「抗拒不能」】
強制わいせつ罪(刑法第176条)が成立するためには、13歳以上の者に対するわいせつ行為の前提として、暴行または脅迫を用いることが必要です。
しかし、実際には暴行または脅迫を用いなくとも、相手が物理的・心理的に抵抗できない状況を利用して性犯罪に及ぶケースがあり、強制わいせつ罪と同様に処罰する必要があります。
準強制わいせつ罪(刑法第178条第1項)は、人の心神喪失や抗拒不能に乗じたり、人を心神喪失や抗拒不能にさせて、わいせつ行為をした者は、暴行や脅迫がなくとも強制わいせつ罪と同様に処罰することを定めています。
「抗拒不能」とは、被害者が抵抗できないようにしたり、または正当な理由があると被害者を誤信させて抵抗の意思を失わせることを言います。
「抗拒不能」について過去の判例から類型化すると、1つは、被害者を催眠状態にさせること、2つ目は、医師の施術等必要な行為と誤信させること、そして3つ目は、業務上必要な身体検査等と誤信させること、等によって被害者を抵抗できなくさせるケースが多いようです。
特に上記3つ目の例のように、モデルや女優等の審査や身体検査、演技指導等と誤信させてわいせつ行為に及び刑事事件化する例も多く、頭書刑事事件例以外でも、平成30年8月28日には、福岡市において、モデルの勧誘を装って声をかけて女性の体を触るなどしたとした男性が、準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されています。
このような準強制わいせつ罪で刑事事件化した場合、被害者による処罰感情は高い傾向にあるため、示談の内容は困難になり、示談金以外でも様々な示談条件を提示していき、示談締結の可能性を探る必要があると考えられます。
そのため、性犯罪の刑事事件で逮捕された場合には、刑事事件専門の弁護士に事件を依頼し、被疑者の身柄解放と迅速な示談交渉を進めてもらうことが大切です。
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