埼玉県川越市で被害者が示談強要して加害者に
埼玉県川越市在住の会社員女性Aさんは、友人と市内のオープンカフェで談笑していたところ、不審な男性VがAさん達の周りを徘徊していたため注意してみたところ、Vが持っている紙袋に不自然な点が認められたため、「あんた盗撮しているでしょう」とVに詰め寄りました。
Vは愕然として沈黙していましたが、Aさんは「いますぐ賠償金を払わなければ警察に突き出して刑務所送りにしてやる」と強い口調でVに迫り、Vはその場で持っていた現金をすべてAに渡しました。
この後、Vは埼玉県警川越警察署に対して、話し合いの余地なく乱暴な言動で無理矢理示談を迫られ現金を取られたと被害を訴えたところ、間もなく、Aさんは恐喝罪の疑いで逮捕されました。
警察の調べに対し、Aさんは「そもそもVが盗撮行為をしていたのが悪い。自分は被害者として損害賠償を求めたに過ぎない」と供述し、被疑事実の一部を否認しています。
(フィクションです。)
刑事事件の被害者は、加害者(被疑者)によって被った物理的損失や精神的苦痛について、民事上の損害賠償請求をする権利が発生するのが一般的です(民法第709条)。
刑法において、犯した罪に対して刑罰が科せられている根拠として、被害者の保護すべき法律上の利益(法益)を侵害したことが挙げられており、つまり、ある犯罪で侵害された法益が、後の被害弁償や慰謝料の支払いによって回復された場合には、成立した犯罪の違法性が事後的に減少すると考えられています。
これが刑事弁護活動における「示談」と呼ばれるものであり、刑事事件弁護士は被害者との示談が成立した場合には、示談が成立した旨を検察官に連絡し、検察官が示談書を確認したり被害者に自由な意思に基づいて示談に応じたかを確認することができれば、検察官は刑事処分をより軽いものへ、または刑事処分の必要はない(不起訴)と判断することもあります。
ある犯罪行為に対して、被害者が加害者に対して損害賠償請求を行うことは民事上認められた正当な権利ではありますが、その権利の主張が社会通念に反して悪質なものである場合、正当な権利主張のつもりでおこなった損害賠償請求行為が一転して犯罪行為になる危険があります。
刑法第249条によれば、人を恐喝して財物を交付させた場合、10年以下の懲役が科されます(恐喝罪)。
犯罪の加害者に対する損害賠償請求も含めて、法律上他人より財物または財産上の利益を受けることができる権利を有する者であっても、その権利行使が社会通念上認容すべき範囲を逸脱する場合には違法であり、それによって財物の交付がなされた場合には、正当な権利行使をしていれば受けられたであろう権利も含めて恐喝罪が成立するとされています(最高裁判例)。
上記刑事事件のように、相手の犯罪行為または民事上の不法行為を前提とすれば、それに対する権利行使が感情的になってしまうことは心情的には理解できますが、相手に害悪が及ぶことを通知して相手を畏怖させること(恐喝)までやり過ぎてしまった場合には、リスクを負うことになりかねません。
一般に、通常の恐喝罪であれば、被害者を畏怖させた性質上被害者に対する示談は非常に困難になる傾向がありますが、上記のように被害者にも刑事上または民事上の非が認められる場合(上記刑事事件例では、Vについて埼玉県迷惑行為防止条例違反が成立する可能性があります)には、刑事事件に適切な知識を有する第三者である弁護士が介入することによって、スムーズに示談成立へと導く可能性が高くなるでしょう。
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(埼玉県警川越警察署への初回接見費用:38,700円)