・公然わいせつ罪(刑法174条)
公然とわいせつな行為をした者は,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
・わいせつ物頒布等罪(刑法175条)
1 わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し,又は公然と陳列した者は,2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し,又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も,同様とする。
2 有償で頒布する目的で,前項の物を所持し,又は同項の電磁的記録を保管した者も,同項と同様とする。
1.公然わいせつ罪
(1)「公然わいせつ罪」とは
公然わいせつ罪は,健全な性秩序,性的風俗を守るために規定されました。
ただ,何が健全な性秩序ないし性的風俗であるかは,社会によっても時代によっても異なります。
(2)「わいせつ」の判断基準
判例によると「わいせつ」とは,「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,通常人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものをいう。」としています(最判昭和26.5.10)。
ただ,健全な性秩序,性的風俗は時代によって変わってきますので,「わいせつ」かどうかは,結局のところその時代,その社会における一般人・基準として決定されることとなります。
(3)「公然」とは何ですか?
「公然」とは,不特定又は多数の人が認識することのできる状態をいいます。
具体例を挙げると,「全裸で道を歩く行為」が典型例といえます。
現実に不特定又は多数の人が認識する必要はなく,その認識の可能性があれば足ります。
例えば,不特定多数の人が通行する可能性のある路上でわいせつな行為に及んだ場合には,たとえ現実にはその際に通行人が全くなかったとしても,「公然」にあたります。
(4)公然わいせつ罪Q&A
公然わいせつ罪が適用される例は?
典型的なものは,路上において陰部を露出するという行為です。
その他にも,乱交パーティー(個室でなく,互いの性交渉を見ることができるパーティー)を提供している風俗店を利用した場合,本罪が適用される可能性があります。
客としてサービスの提供を受けたとしても,本罪の適用が問題となった事件があります。
2.わいせつ物頒布等罪
(1)本罪の客体
「わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物」です。
現代ではインターネットが普及しており,サイバーポルノに対応するため「電磁的記録に係る記録媒体」も客体として扱われるようになりました。
(2)「頒布」
不特定又は多数の人に対して無償で交付・譲渡することをいうというのが判例です(大判大15.3.5)。
しかし,賃貸行為が「販売」にも「頒布」にも含まれず,犯罪とならないというのは不合理であるということから,「頒布」とは販売以外の方法で不特定又は多数の人に交付することをいうとする見解も有力になっています。
(3)「公然と陳列」
わいせつ物を不特定または多数人が認識できる状態にすることをいいます。
資格による場合のみならず,聴覚による場合も含まれます。
(4)「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」
電子メールによりわいせつな電磁的記録を添付して頒布する場合が挙げられます。
(5)わいせつ物頒布等罪Q&A
わいせつ物を持っているだけでも処罰されますか?
⇒単に持っているだけでは,本罪で処罰されません。
ただ,無修正のアダルトビデオ(わいせつ物)を売ったり貸したりして儲けようという目的等のために(「有償の頒布目的」で)所持している場合には本罪で処罰されます。
なお,児童ポルノ(18歳未満のポルノ)については,単なる所持であったとしても処罰される場合があります。
詳しくは ~ 児童買春・児童ポルノ禁止法違反 ~へ
~公然わいせつ・わいせつ物頒布罪における弁護活動~
①示談(公然わいせつ罪)・贖罪寄付
公然わいせつ罪(公園などで性器を露出した事案)は,健全な性秩序,性的風俗を守る罪であるため被害者が観念できません。
しかし,その現場を目撃した人が事実上の被害者と捉え示談交渉に成功すると,反省の情を示すことにより不起訴処分など有利な結果を導くことができる可能性が高まります。
また,反省の情を表す方法としてしょく罪寄付という方法もありえ,様々なアドバイスをさせていただきます。
※しょく罪寄附とは,道路交通法違反,覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する 弁償ができない刑事事件」などの場合に,被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために,公的な団体等に対して行う寄附です。
②環境調整(公然わいせつ罪)
依頼者の方と相談しつつ,必要であれば矯正プログラムの検討とともに証拠提出の上,再犯防止に向けてサポートします(捜査段階から行うこともあります)。
⇒路上で性器を露出してしまう方の中には,犯行を常習的に行ってしまう場合があります。
繰り返し性犯罪で捕まった場合,反省や更生がされていないとして,重い処分がなされる可能性が高まります。
しかし,そのような常習者のなかにも,犯罪行為を辞めたいと思いながら,自らをコントロールできずに繰り返してしまう方がいます。
このような場合には医療機関などの専門機関への受診と治療などを行い,根本からの改善を試みるように促します。
③早期の身柄解放
わいせつ事件で逮捕された場合,身柄拘束の期間が長くなればなるほど,事件のことが周りの人に知れ,職場復帰や社会復帰が困難になってしまいます。
ですから,逮捕されてしまった場合,まず目標となるのは勾留手続という次の段階に進ませないことです。
できるだけ早く弁護士に依頼し,勾留手続を回避すべく適切な弁護活動をしてもらうようにしましょう。
また,適切な取調べ対応をすれば,身柄拘束の必要性がないと判断され早期の釈放を受けやすくなります。
④無罪を主張
わいせつ行為について,何ら身に覚えがないのに逮捕されてしまった場合,早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
捜査機関による取り調べで,虚偽の自白が作成されてしまわないようにも,弁護士から取調べ対応についてのアドバイスを受けることが大切です。
また,犯行とされる行為にわいせつ性が認められない場合や規制対象の行為には当たらないというような場合には,それを証明する証拠を収集したり,捜査機関の見解が十分な証拠に裏付けられていないことを主張したりするのに,弁護士の専門的な知識・能力は不可欠です。
公然わいせつ・わいせつ物頒布等罪の容疑で警察等の捜査機関に取り調べ又は逮捕された方、公然わいせつ・わいせつ物頒布等罪で刑事裁判を受けることになってしまった方は、公然わいせつ・わいせつ物頒布等事件の実績豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部までご相談ください。
さいたま市を中心に埼玉県及び関東地方一円の刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士が,公然わいせつ・わいせつ物頒布等事件における刑事処分の見通しと取り調べ対応、前科回避や減刑に向けた対応方法等をアドバイスいたします。
公然わいせつ・わいせつ物頒布等事件の当事者が逮捕・勾留等による身体拘束を受けている身柄事件の場合、最短即日に、弁護士が留置場や拘置所等の留置施設まで本人に直接面会しに行く「初回接見サービス」もご提供しています。