【事例紹介】埼玉県さいたま市大宮区で警察官に対する威嚇行動で公務執行妨害罪で逮捕
警察官に対する攻撃的な言動によって公務執行妨害罪などの疑いで刑事事件化してしまった場合の、刑事事件の展開やその刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。
【刑事事件例】
埼玉県さいたま市大宮区において、繁華街をパトロール中だった男性警察官は、体のふらつきがひどく、攻撃的な態度で周囲を威嚇している不審人物Aを発見し、薬物使用の疑いがあるとして、職務質問を行いました。
これに対し、Aは「任意の職務質問には応じない」という趣旨の発言をし、警察官を無視して立ち去ろうとしました。
警察官がなおも質問を続けようとすると、Aはズボンのポケットからバタフライナイフを取り出し、警察官に対して「殺すぞ」と迫りました。
Aは応援を呼ばれて駆け付けた大宮警察署の警察官らによって取り押さえられ、銃刀法違反および公務執行妨害罪の疑いで現行犯逮捕されました。
(2018年3月31日に産経新聞WESTの記事を参考に、事実を大幅に変更したフィクションです。)
【公務執行妨害罪で逮捕された場合の弁護活動】
公務執行妨害罪は、「公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行又は脅迫を加えた」場合に罪となり、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金が科せられます。(刑法95条1項)
公務執行妨害罪の「暴行」とは、警察官に対して直接暴行を加えなくても、公務を妨害するような暴行であれば成立すると解され実務上運用されています。
ですので、上記事例のように警察官に対して刃物等を突き付けた場合はもちろんのこと、例えばパトカーを叩いて威嚇する行為等も「暴行」に当たるとして公務執行妨害罪が適用された例もあります。
公務執行妨害罪で逮捕された場合、当該公務員に対する復讐や証拠隠滅の要請等が疑われることもあり、実務上、逮捕に引き続いて10日間被疑者の身体を拘束する「勾留」が決定されることが多くみられます。
また、いちど勾留が決定した場合、勾留の延長で最大でプラス19日間の身体拘束が決定されることも多く、最長で20日間拘束されることになります。
被疑者の方が、逮捕や勾留の延長を含めて20日以上身体拘束された場合、長期にわたって社会から切り離されるため、例えば職場から懲戒解雇されるなどの様々な社会的制裁を受けることが考えられます。
公務執行妨害罪は、「被害者なき犯罪」と言われています。
これは、公務妨害罪は、国家の公務員の活動が円滑に行われること自体を法的に保護する法律だからであり、公務の妨害によって、公務員の円滑な公務執行が害されたこと自体が「被害」であると解されているためです。
公務執行妨害罪は、前述のとおり、被疑者段階においても逮捕・勾留される傾向があることに加え、上記のとおり、「被害者」が存在しない犯罪であるため、「示談」によって被害を回復するということもできず、それゆえ、検察官によって起訴される可能性が高い犯罪類型であると言えます。
そのため、公務執行妨害罪で刑事事件化してしまった場合には、少しでも被疑者の方の情状主張が認められ、少しでも科される刑罰が軽くなるよう、刑事事件に強い弁護士が迅速に対処することが重要となります。
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