【報道解説】
女性に抱きついて暴行で逮捕 面識の無い女性に背後から抱きついたとして暴行の疑いで男性が逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「神奈川県茅ケ崎署は2日、暴行の疑いで、住所不定、無職の男(53)を逮捕した。 逮捕容疑は、1日午後2時40分ごろ、茅ケ崎市茅ケ崎3丁目の温浴施設内エレベーターで、同市内に住む従業員の女性(47)に背後から抱きついた、としている。 調べに対し『ハグしただけで暴行はしていない』と供述し、容疑を否認している 署によると、エレベーターには2人しかいなかった。 面識はなかったという。」
(令和4年10月2日にカナコロ:神奈川新聞社で配信された報道より引用)
【抱きつきは暴行罪になる?】
今回取りあげた報道では、逮捕された男性が警察の取り調べにおいて「ハグをしただけで暴行はしていない」と供述しているようです。 刑法208条が規定する暴行罪は、殴る蹴るなどの暴力行為をした場合に成立する犯罪だと思われている方がいるかもしれませんが、後ろから女性に抱きつく(ハグをする)行為は暴行罪に当たる行為になりますので、逮捕された男性には暴行罪が成立する可能性が高いと言えます。 ちなみに、暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金、又は拘留若しくは科料となっています。
【抱きつきは強制わいせつ罪になる?】
報道を読んだ方の中には、抱きつく(ハグをする)行為は刑法176条の強制わいせつ罪ではないのかと思われた方がいらっしゃるかもしれません。 確かに、見知らぬ女性に抱きつく(ハグをする)という行為は、場合によっては強制わいせつ罪や、その未遂罪が成立する可能性があります。 刑法176条では、13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するとしています。 そのため、被害者の反抗を著しく困難にする程度に抱きついたという場合は刑法176条の強制わいせつ罪における「暴行」に当たることになりますので、そうして抱きついた上で、被害者の胸や下半身をまさぐったり、無理やりキスをしたりなどのわいせつな行為をした場合には、強制わいせつ罪が成立する可能性が高いと考えられます。
他にも、たとえば、後ろから抱きつくと同時に被害者の胸を揉んだというような暴行とわいせつ行為が一緒に行われた場合にも強制わいせつ罪が成立する可能性が高いと言えます。 また、わいせつな行為を実際には行わなかったものの、わいせつな行為を行う目的で抱きついたのであれば、強制わいせつ罪の未遂罪が成立する可能性もあります。
以上のように、抱きつき行為が具体的にどのような態様であったのか、抱きついた後に被害者に対して行った行為がどのようなものであったか、どのような目的で抱きついたのか等の事情によっては、強制わいせつ罪や強制わいせつ罪の未遂罪が成立する可能性があります。 このような強制わいせつ罪の法定刑は、6か月以上10年以下の懲役となっています。
【暴行の疑いで刑事事件化したら】
取り上げた報道では、男性は暴行の疑いで逮捕されていますが、男性が女性に背後から抱きついたという事件ですので、今後の捜査では、男性が女性にわいせつな目的で抱きついたのか、抱きついた際に女性の身体のどこを触ったのかなどの抱きつき行為をしたときの具体的な状況などが詳しく捜査されることが予想されます。 抱きつき行為の目的や、その具体的な状況次第によっては、暴行事件ではなく、強制わいせつ事件や強制わいせつ罪の未遂事件として手続きが進んでいく場合もあり得ます。
先ほど説明した暴行罪と強制わいせつ罪の法定刑を比べるとわかるように、強制わいせつ罪の法定刑には罰金が定められていませんので、仮に検察官が事件を強制わいせつ事件として起訴した場合に必ず正式な裁判が開かれることになります。
従って、暴行罪よりも強制わいせつ罪のほうが重い犯罪であるといえますので、事件が暴行事件として処理されるのか、強制わいせつ事件として処理されるのかはその後の手続が大きく異なる可能性があります。そのため警察の取り調べにおいては、取り調べを担当する警察官の誘導に引っかかって、抱きつき行為が強制わいせつ罪に当たるようなものであったと虚偽の自白してしまわないよう、取調べには十分注意して臨む必要があります。 警察署の取調室という密室で、取調べのプロである警察官を相手に虚偽の自白を行わないようにするためには、事前に弁護士に相談して警察での取調べ等の対応についてアドバイスを得ておくことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。 ハグをしたことにより暴行の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。