【報道解説】強制性交等罪と刑法改正後の不同意性交等罪の被害者年齢

【報道解説】強制性交等罪と刑法改正後の不同意性交等罪の被害者年齢

令和5年7月13日施行の改正刑法において新設された「不同意性交等罪」の逮捕事案を紹介しつつ、特に被害者年齢の観点の刑事処罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します。

【報道事例】

東京・世田谷区のホテルで女子中学生にみだらな行為をしたとして、強制性交等罪の疑いで大学4年生の男(21)が逮捕されました。
被疑者は去年11月、世田谷区のホテルで女子中学生(12)にみだらな行為をした疑い。
警視庁にると、被疑者は女子中学生に横浜市の商業施設の近くの路上で声をかけ、その後、ホテルに移動して犯行に及んだ。
女子中学生の母親が「娘がわいせつなことをされている」と警視庁に相談したことから事件が発覚した。
取り調べに対し、被疑者は「性交したことは間違いないが13歳未満とは知らなかった」と被疑事実を否認している。
(令和5年7月29日に配信された「TBS NEWS DIG」の記事を基に、一部事実を変更したフィクションです。)

【刑法改定:不同意性交等罪の新設】

令和5年7月13日をもって、「不同意性交等罪」が施行されました。

不同意性交等罪の新設の背景には、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑み、構成要件の明確化と細分化を進め、以てこの種の性犯罪に適切に対処する必要があるとの理由に基づいています。

このたびの刑法改正により、旧刑法の「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」「強制性交等罪」「準強制性交等罪」を統合し、新法における「不同意わいせつ罪」および「不同意性交等罪」を規定することになりました。
あわせて、性犯罪についての公訴時効期間の延長や、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設なども盛り込まれています。

【改正前の強制性交等罪】

上記刑事事件は、昨年11月発生の行為のため、刑法改正前の強制性交等罪が適用されています。

強制性交等罪では、「暴行・脅迫」を用いて13歳以上の者に対して性交や肛門性交、口腔性交(以下「性交等」)を行うことが犯罪の構成要件となっており、13歳未満の者に対しては、「暴行・脅迫」がなくても性交等のみで処罰されるという規定でした。
上記事例では被害者少女が12歳であるため、「暴行・脅迫」の事実が無くても強制性交等罪で処罰されることになります。

【不同意性交等罪とは】

刑法改定後の不同意性交等罪では、「次のような行為」等により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず処罰されることになります(刑法第177条第1項)。

「次のような行為」等を簡潔にまとめると、「暴行若しくは脅迫」、「心身の障害(おそれも含む)」、「アルコール若しくは薬物の摂取」、「睡眠その他の意識不明瞭状態」、「不同意を形成・表明するいとまがない」、「予想と異なる事態への恐怖・驚愕」「虐待に起因する心理的反応」、「経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること」の8項目が列挙されています。

今回の刑法改正では、加害者と被害者との年齢についても変更が規定されています。

不同意性交等罪では、「十六歳未満の者に対し、性交等をした者」にも不同意性交等罪が成立するとしつつ(原則)、「当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者」に限って(例外)不同意性交等罪が成立すると規定しています。
これは、被害者より5年以上年上の者であれば、年少者の性的保護の規範違反によって処罰をする必要があるのに対して、ほぼ同年齢の中学生・高校生同士の性行為等については不同意性交等罪の処罰範囲から除外するためと理解されています。

上記刑事事件においては、刑法改正の前後を問わず、12歳に対する性行為はいずれも処罰されることに変わりはありません。

【不同意強制性交等罪の刑事弁護】

今回の刑法改正によって不同意性交等罪が新設されましたが、従来の性犯罪に対する刑事弁護の原則どおり、前科が付くことを避けたい場合は、検察官に事件を起訴される前に被害者の方と示談を締結することが重要になります。
というのも、起訴前に被害者の方と示談を締結したという事実は、検察官が起訴をするかどうかの判断に当たって起訴を回避する判断に傾く考慮要素となるからです。

示談交渉は通常、被害者が成人であれば被害者本人と交渉を進めますが、被害者が未成年である場合は、被害者の保護者の方と示談交渉を行うことになります。

性犯罪全般の傾向として、被害者の方は、不安や恐怖に怯え、傷つけられた自尊心から犯人を許せないという処罰感情が強く、示談が難航することは珍しいことではありません。
しかし、刑事弁護の経験豊富な弁護士が、粘り強く謝罪や示談の条件を提示し、二度とこのような犯罪を起こさないと制約すること等を通じて、最終的に示談の締結に至る実績も多数ございます。
示談交渉は必ずしも決まった方法があるわけではなく、被害者の方が何を望んでいるのかを汲み取り、それに対して最適な問題解決案を提示することが最も重要ですので、示談締結の確率を少しでも上げたいと希望する方は、示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所で、示談交渉の経験が豊富な弁護士が在籍しております。
不同意性交等罪の性犯罪で被害者の方との示談を考えている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談や初回接見サービスをご利用ください。

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